サニブラウンも「バトン練習したい」。リレー銅メダルが繋ぐ東京への夢 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

 1走の多田にとっては、カーブの半径が最も大きい9レーンになったことも幸いした。伊東浩司強化委員長から、「カーブのスペシャリストではないから直線でいいイメージを作れ」とアドバイスされたのも功を奏し、予選よりいい走りになったと土江コーチは言う。

「直線の方が好きなので、9レーンはカーブが緩やかなので走りやすかったし、体の軽さも予選とは全然違っていた。スタートも決まったのでいい走りができました」という多田。内側の中国との差を開いて飯塚に中継すると、飯塚もそのまま3~4番手を維持して桐生にバトンを渡した。それでも好調のイギリスやアメリカは強く、4走の藤光にバトンが渡った時点でジャマイカに少し遅れる4番目。やはりメダルは無理かと思われた。

 その矢先、4走のボルトがハムストリングの痙攣でレースを中止するアクシデントが起き、日本はジャマイカを抜いて3位に入った。世界歴代3位の37秒47で走ったイギリスが優勝し、37秒52で2位のアメリカに続いた。

 昨年のリオ五輪で200mに出場し、リレーは補欠のままで出場できなかった藤光はこう話す。

「去年からの(リレーを)走りたいという気持ちが1年越しでようやく叶った。世界選手権は何が起きるかわからないし、そういう舞台をこれまで経験していたので、行けといわれればいつでも行く心構えでいた。1、2走のバトンパスを見て、いけるという感覚があったので、自分の走りをすれば結果はついてくると思いました。ボルトが止まったのは見えましたが、順位を確認する余裕もなかったので、0秒1でも速く走ろうと思って走っただけです」

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る