記録よりも勝つこと。サニブラウンが教えてくれた「短距離走の本質」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

 こう話したサニブラウンは、今年6月の日本選手権で03年の末續慎吾以来14年ぶりの100mと200mの2冠獲得を果たしている。その末續は、03年パリ世界選手権200mに世界ランキング3位の20秒03のタイムを持って臨み、決勝ではラスト5mで差し返して銅メダルを獲得と、日本男子ショートスプリントの歴史を作った。サニブラウンが世界選手権200mの決勝進出という偉業を、日本選手権2冠とともに今年受け継いだというのにも運命的なものを感じた。

 サニブラウンは準決勝の通過記録で一番遅かったとはいえ、組2位で通過したことで決勝は8レーンと走りやすいところになった。100mの準決勝のあと、「いくら持ちタイムは速くても結局は一緒に走らないとわからない部分はあるので、一緒に走ってそこで誰が強いのかというのがこの大会では問われていると思う」と話していたように、ビッグネームが相手でも、怖気づくことなく走っていたからこそ呼び込んだ運だろう。

 10日の決勝も、19秒77のアイザック・マクワラ(ボツワナ)を筆頭に、サニブラウン以外は19秒台を持つ選手たちだったが、強気な気持ちは変わらなかった。スタートからうまく加速すると、前半は9レーンのアミール・ウェブ(アメリカ)との差を一気に詰めただけではなく、他の選手たちもリードする走りをしていた。

「緊張は全然してなかったし、むしろ世界のファイナルだったので、とことん楽しんでやろうと思っていました。メンバー的にも自分より速く前半の100mを走る人はいないと思ったので、いけるだけいって、そこからリズムを保っていけば前で勝負ができると思っていました」

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