記録よりも勝つこと。サニブラウンが教えてくれた「短距離走の本質」 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

 大本命不在で、優勝のチャンスが誰にでもあるレースでは、記録が伸びないということはよくある。だからこそ、サニブラウンの脚がもし万全で、直線に入ってトップに立っているような状況を作り出せていたら、ほかの選手の焦りを誘い、さらに混戦に拍車をかけていたはずだ。下克上を起こせる可能性のあるレースだったことは間違いない。

 日本陸連の伊東浩司強化委員長は、「ゴールを正面から見ていたので、後半の走りはわからなかったですが、19秒台の選手たちをリードした前半の走りは19秒台の走りだと思う」と評価する。さらに「戦力としては貴重だが、脚の状態を考えれば将来のこともあるので、今の段階ではリレーには起用しない方針だ」とも話した。

 彼の世界選手権は、この日までの5レースで終わった。この5本のレースで彼が得たものは、限りなく大きい。

「100mは完璧に今大会のレベルに通用しているかなと思うし、200mも最初の100mは、ほとんどトップの位置で通過しているので、ラスト100mの部分でどんどん伸びてくる選手たちについていけるように練習をしていきたい。決勝進出というのも意味はあると思いますが、戦えないのは面白くないので、まだ満足はできないですね。それに再来年の世界選手権やその次の東京五輪に向けて、これからレベルが上がっていくと思うので、そこでもしっかり決勝に出て、メダルを獲れるように、今回の悔しさと反省点を生かして前に進んでいけたらいいと思います」

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