井上大仁の妄想力。「東京五輪のマラソンで勝つイメージもできている」
【男子マラソン界の星・井上大仁 後編】
8月のロンドン世界陸上選手権でマラソンに出場する井上大仁(ひろと/MHPS:三菱日立パワーシステムズ)は、山梨学院大学で1年から箱根駅伝を走り、2年からは「日本人エース」と呼ばれるようになった。
今年2月の東京マラソンで、日本人トップの8位でゴールした井上 チームには常にケニア人留学生がいたため、実績に見合うほどの注目を集めることはなかったが、彼が着実に成長するためには「好都合」だったのかもしれない。井上自身も、それを否定しない。
「1学年下のエノック・オムワンバの強さを間近で見せつけられていたので、自分がどんな結果を出しても喜べないというか......。自己新を更新しても、『そこで終わりか?』といつも思っていました。
駅伝でもエノックに助けられたという感じはあるし、自分がゲームをひっくり返すような走りができたというわけではないので、『まだまだだな』と。他にも、同世代には強い選手がたくさんいましたし、そういう人たちに勝つにはどうしようかと考えていました。駅伝の結果や1万mの自己ベストに一喜一憂するのではなく、常に上を見る目線でいられましたね」
昨年、井上と同じMHPSに加入したオムワンバは、山梨学院大1年時に出場した出雲、全日本駅伝で区間賞(全日本では2区の区間新記録を更新)を獲得し、箱根駅伝では12人をごぼう抜きする大活躍。2年以降はケガに悩まされて駅伝では苦戦したものの、トラック競技で輝かしい記録を残し続けた。
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