【月報・青学陸上部】いま明かす田村和希の失速、下田裕太の激走の真実
極私的! 月報・青学陸上部 第28回
平塚中継所。田村和希から下田裕太へ襷がつながった 苦悶の表情を浮かべ、フラフラになりながら田村和希(3年)がやってきた。8区で待っていた下田裕太(3年)は、田村和の名前を叫んだ。
田村和は襷(たすき)を下田に渡す時、苦しくて何も伝えることができなかった。だが、下田が放った言葉はしっかりと聞こえた。
「任せろ!」
下田は襷を受けるとエンジン全開で飛び出していった。
* * *
6区の小野田勇次からトップで襷を受けた後、田村和は軽快に走り出した。
「最初は気分的にもノッていて、体も軽くてラクな感じで走れていましたし、昨年の小椋(裕介)さんと同じくらいのラップで入りました。このままいけば後半5kmでもっとペースを上げられる。区間賞を獲って、下田に渡すぞっていう気持ちでした」
しかし、10km地点で給水を受けた時、異変が起きた。最初にスポーツ飲料水、次に水を飲んだ。すると逆流してきたのだ。しばらくすると胸がモヤモヤして吐き気が襲い、汗が吹き出した。まだ16kmを超えたところ、ここでペースを落とすわけにはいかない。しかし、スピードを上げると嘔吐しそうになった。
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