【月報・青学陸上部】不振の「秋山隊長」が快走。往路優勝を呼び込んだ (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text by Sato Shun  photo by Kyodo News


 秋山は「いや、走りたいです」と、12月26日のポイント練習は必死に走った。そうして大会直前、ギリギリに調子を取り戻したのである。

 それが爆発的な走りにつながった。湘南の潮風を感じながら気持ちよく走れたという。メンタルがよいと、それが走りにもつながる。楽しいことが大好きな秋山は、走る前に原監督に言われたという。

「秋山隊長、いけよ」

 その言葉でリラックスできた。

「ふつう、選手のことをニックネームで呼ばないですよね。でも、呼びおったーと思って、なんか楽しくなったんです」

 秋山の心のスイッチが入った。気がつけば独走し、見事、区間賞を獲得。2位の早稲田大に1分22秒の大差をつけていた。青学OBで"山の神"である神野大地からは「湘南の神」という称号をもらった。

「秋山がキーマン」と語った原監督の期待に見事に応えたのである。

 秋山が作った流れをしっかりつないだのが、4区を走った森田歩希だ。最初は向かい風が強くて苦しんだが、単独走で淡々と走り、徐々にタイム差を広げていった。「今年の2年は弱い」と言われてきたので見返してやろうと頑張ってきた。全日本駅伝は7区を走り、MVPを獲得した。その調子のよさをそのまま箱根につなげて、4区区間賞の栃木渡(順天堂大)の63分36秒にわずか7秒差の区間2位で準エース区間を走り切った。

 2位の早稲田大にさらに7秒差を広げ、1分29秒のタイム差をつけた。この時点で駒澤大とは6分18秒差、東海大はシード圏外に落ちていた。早稲田との差は1分30秒内だったが、原監督は早稲田の安井雄一は山の神に化けることはないと踏んでいた。

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