【月報・青学陸上部】苦しんだ下田裕太は『君の名は。』に学んで走る (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Aflo


 下田の言葉通り、ここからぐっと調子を上げる。9月末の学内TT(タイムトライアル)で3位に入り、さらに10月上旬の世田谷記録会の5000mでは13分56秒96で11位ながら、自己ベストを叩き出した。

「これまで全然いい結果を出せなかったけど、ようやく今までやってきたことが証明できた。これなら出雲いけるって感触をつかんだので、ほんとよかったです。前半、さぼり過ぎたんで、これからしっかり暴れていきたいと思います」

 下田は笑顔で出雲での出走を楽しみにしていた。

 出雲駅伝、下田はエース区間の3区を任された。しかし、田村和希から首位で襷(たすき)を受けたのにもかかわらず、東海大学1年の關(せき)颯人に抜かれ、23秒差をつけられた。調子がよかっただけに、区間4位に終わり、自分の走りができなかったことがショックだった。

「昨年は三大駅伝の1発目だったので、緊張したのかなって思ったんです。今回は緊張していないつもりだったんですけど、寝られなくて......。朝は調子がよかったんで、こりゃ絶対にいけるわって思ったんですけどね。でも、どこか浮ついた感があったし、めちゃくちゃ打ちのめされた。まだまだ弱いですね」

 夏季合宿からここまでの流れは決して悪くはなかった。合宿期間はしっかりと走り込んだ。フォームが固まり、走りに力強さが増した。「自分ら3年生がやってやる」という気負いがあったが、それは下田にとってプレッシャーではなく、モチベーションのひとつになっていた。だが、一番ほしかった結果が出なかった。

「うーん、何が原因なのかなぁ」。調子がよかっただけに突然、立ちはだかった壁に戸惑うばかりだった。

 全日本大学駅伝は、その戸惑いを完全に消せぬまま突入した。1区、下田の隣には他大学のエースが並んでいた。ゆっくりしたペースのレースは、中間点の給水所からいきなり動いた。東洋大の服部弾馬が仕掛けたのだが、下田は虚を突かれたようだった。結局、8位で田村和につなぎ、トップの東洋大との差は30秒になった。

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