【月報・青学陸上部】原晋監督「うちには、S以上のカードが4枚ある」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun photo by AFLO

 今年の箱根駅伝は4区が2.4km増えて20.9kmになり、5区が20.8kmに短縮される という変更があった。4区は最後に登りが加算されるなど難易度と重要性が増した。5区は短くなったとはいえ、タイム差がつく区間としての重要性は変わらない。駒澤大の大八木弘明監督、早稲田大の相楽豊監督、東海大の両角速監督らが5区を重視する中、原監督だけは見ているところが違った。

――5区ではなく、1区を重視するのはどういう理由からでしょうか。

「1区は、昨年の久保田(和真)にみたいに抜け出てくれると非常にラクです。あとが余裕をもって走れるので。ただ、今年は"そうはさせじ"と他大学が1、2、3、4区まで速い選手を順に並べてくる可能性がある。そこで青学を前に行かせないっていうのは、ひとつの作戦だと思います。それでもうちは、往路はもちろん、復路にも絶対的な強さがある。

 それを踏まえて1区の役割はブレーキになることなく、先頭集団の輪の中に入っていくこと。そこで前が見える範囲、30~45秒ぐらいの差でいけると2区に一色(恭志・4年)がいるのでリセットできるし、3区以降のメンバーで差を広げることができる。1区でドカーンと離されなければ勝てるんです。だから重要なポイントなんですよ」

 原監督は、他大学が重視する5区については早い段階から「今年は耐える区間」としていた。今年のチームには箱根2連覇に貢献した山の神・神野大地(現・コニカミノルタ)のような存在がおらず、夏季合宿から山登りの選考に苦労した。ようやくメドがついた内田がエントリー前に故障し、青学にとっては唯一のアキレス腱になっている。だが原監督の表情に深刻さはない。

――短縮された5区は特別視しないという考えですか。

「5区はもちろん大事です。でも、神の出現を待っていても仕方ない。うちの神の存在は昨年で終わり。だから区間5位以内に入ればいいと割り切っている。そして、他大学を見て、山の神がいるのかっていうと昨年の神野みたいな存在はいない。早稲田や駒澤を見ても、今年からいきなり神になれる存在はいないし、急に神になることもないんです。

"神"になれる選手って最初からすごいんですよ。今井くん(正人・順天堂大OB)も柏原くん(竜二・東洋大OB)も1年から強かった。その観点でいうと、東海大学だけが不気味ですね。5区は舘沢(亨次・1年)くんが走るという話が出ているけど、未知数の1年生が山を登った時、いきなりドカーンとくる可能性がある。でも、そこで神が出て来たらもうしょうがない。国民的ヒーローなわけだし、それが箱根駅伝なんですよ。ただ、山を含めて往路で仮に1分半負けていても復路で絶対に取り戻せる。うちにはそれだけのメンバーがいるからね」

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