【月報・青学陸上部】エースの目にも涙。4年生の快走で出雲を制す (6ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun   photo by AFLO

 春から安藤が故障で走れず、秋山雄飛の調子も上がらない。「史上最強」と称された昨年の4年生と比較され、原監督から「4年生しっかりしろ」と叱咤された時もあった。そんな中、一色は大会で結果を出し続けた。4年生の復活を待ち続け、それが出雲で報われた。一色の涙は、苦しんだ同期の姿を知るからこそ溢れたものだったのだ。

 表彰式が終わり、出雲市の青学OBとの写真撮影が終わると選手は多くのファンに囲まれた。それを満足そうに見つめる原監督に、出雲優勝の要因について聞いた。

「まず田村が駅伝走りをしてくれた。そして、4年生が4、5、6区でまとめてくれた。茂木がやられていたら勝利がなかったという状況で、逆に(トップとの差を)11秒に縮めてくれた。ここが大きかったですし、いけるなって思いました。そして、安藤の走りが神っていた。キャプテンとして精神的にたくましくなった姿を見せてくれたし、一色は自分の力を十二分に発揮してくれた。大学スポーツはやっぱり4年生を中心のチームが強いんですよ」

 見ていて思ったのは、青学の総合力の高さとアンカーの強さだ。最後のアンカーに絶対的なエースが君臨している強みは、レースを組み立てる際の軸となり、それまでの区間を走る選手の精神的な支えにもなる。

「最後に一色さんがいるんで」

 3区までの鈴木、田村和、下田の下級生たちの言葉が、それを示している。もちろん、選手個々の能力の高さもあり、原監督のレース展開の読みから選手を配置した策も当たった。ただ、他大学と競りながらも、どこか余裕があったのはやはり一色というアンカーの存在が大きかったからだ。
 
 また、今回の出雲は大学の勢力図が変わりつつあることを示した。

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