2016.08.20

マイナーゆえの手厚い強化が、
荒井広宙の競歩五輪初メダルを生んだ

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

強い日差し照りつける中、見事3位でゴールした荒井広宙 8月19日の朝8時にスタートしたリオデジャネイロ五輪陸上競技50km競歩。昨年の世界選手権優勝のマテイ・トート(スロバキア)と2位のジャレド・タレント(オーストラリア)が世界選手権と同じ順位でゴールしたあと、ラスト1km手前でエバン・ダンフィー(カナダ)を突き放した荒井広宙(ひろおき・自衛隊)が3時間41分24秒で3番目にゴールした。それは、今大会陸上競技で日本勢初のメダル獲得というだけではなく、日本競歩史上初となる五輪メダル獲得の瞬間となった。

 しかし、レース直後に4位に入ったダンフィーが所属するカナダチームが、ラスト1km付近で起きた荒井との接触が妨害行為だったと抗議。審判長はそれを認めて荒井を失格と判定してしまう。これに対して日本チームも即座に上訴し、国際陸連の担当理事会の裁定に委ねた。

 その接触は一度抜かれた荒井が抜き返そうとした時、その先に折り返しが迫っていることもあって空いていた内側を突いて起きたものだった。ダンフィーの左ひじが荒井の上腕部に当たった。そこから4~5歩歩いて荒井が前に出ると、その瞬間、ダンフィーが2~3歩よろけて両手を広げ、妨害されたとアピールするようなそぶりを見せたのだ。何度か映し出されたスロー映像では、衝撃で少しのけぞっていたのはむしろ荒井の方だった。誰がどう見ても、普通にある接触シーンでしかなかった。

 日本陸連の今村文男競歩部長は「失格にされた時は、『えっ、あれで?』という印象でした。他の国の選手やコーチから何で荒井が失格なんだと聞かれたので説明すると『カナダの選手はその前からフラフラになっていたじゃないか』と呆れられました」という。

 荒井本人に接触について聞いても、「カナダの選手と近かったので当たったけれど、競歩の場合は腕ふりが大きいので接触するのはつきものなので……。それで脇腹が痛くなったということもなかったので、当たっても影響はなかったです」と、”被害を受けた側”として説明していた。