1964東京五輪から50年。記録はどれだけ縮まったのか?

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva photo by Getty Images

10月特集 東京オリンピック 1964の栄光、2020の展望(3)

 1964年にアジアで初めてとなるオリンピックが東京で開催され、戦後からわずか19年しか経っていない日本は、スポーツの舞台で復興した姿を世界中にアピールした。日本は、第1位・アメリカ合衆国(36個)、第2位・ソビエト連邦(30個)に次ぐ、第3位の合計16個もの金メダルを獲得。オリンピックという世界的祭典で日本選手が活躍する姿に、国民はテレビに釘付けとなり、熱狂した。

男子100メートルで当時世界タイ記録を出したボブ・ヘイズ(右)男子100メートルで当時世界タイ記録を出したボブ・ヘイズ(右) また同時に、東京オリンピックは世界レベルを身近に体感した大会でもあった。日本のトップ選手が世界各国の選手に大きく差を開けられるというシーンは、少なからず日本国民に衝撃を与えたことだろう。東京オリンピックでは、陸上や競泳といったタイムを争う競技で世界記録が連発。陸上男子100メートルでは、アメリカのボブ・ヘイズが10秒06という世界タイ記録をマーク。さらに、男子4×100メートルリレーでも、ヘイズはアメリカチームの一員として走り、39秒0の世界新記録を樹立した。

 1960年代、高度経済成長の波に乗った日本は、首都高速道路や東海道新幹線が開業するなど、すべての産業が飛躍的に拡大していった。その集大成のひとつとして開催された1964年の東京オリンピックから、今年で50年――。排気ガスが社会問題となっていた自動車産業は、新たなエネルギー源で走る電気自動車を生み出し、海外旅行者は80倍近くに跳ね上がり(1964年=約22万人、2013年=約1747万人)、壁につながれたダイヤル式の黒電話はタッチパネル式の携帯電話に変わった。このように目まぐるしく変化した半世紀で、スポーツの世界記録はどのぐらい縮んだのだろうか?

 まず、前述の男子100メートルから見てみよう。ヘイズが世界タイ記録の10秒06を出した50年後の現在、世界最速タイムとして記録されているのは、ジャマイカのウサイン・ボルトが2009年の世界選手権で叩き出した9秒58だ。「ライトニング・ボルト」の愛称を持つ人類最速のスプリンターは、2008年の北京五輪で3個の金メダル(男子100メートル、男子200メートル、男子4×100メートルリレー)を獲得。196センチの長身を生かした大きなストライド走法は、レース中盤から爆発的な加速力を生み、世界新記録を出したレースでボルトは最高時速44.17km/hをマークした。

 ボルトの保持する世界最高記録(9秒58)と、1964年の東京オリンピックで金メダルに輝いたヘイズのタイム(10秒06)を比較すると、男子100メートルのトップタイムは50年間で0.48秒、タイムが縮まった。よって、両者がそのタイムで同時に100メートルを走ったならば、ボルトはヘイズを約4.8メートルも引き離してゴール、ということになる。

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