【陸上】男子短距離陣、成長のカギは「複数種目挑戦」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by(C)Takamitsu Mifune / PHOTO KISHIMOTO

9月特集 アジア大会2014の発見!(27)

 故障者が出てリレーのオーダー編成に苦しんだアジア大会の男子短距離。日本陸上連盟の伊東浩司男子短距離部長は「桐生祥秀がケガでリタイアした時点で、このような状況はある程度覚悟しなければいけないと感じていた」と話す。

銀メダルを獲得した400mリレーの(左から)高瀬慧、高平慎士、飯塚翔太、山縣亮太銀メダルを獲得した400mリレーの(左から)高瀬慧、高平慎士、飯塚翔太、山縣亮太 最初に行なわれた100mは、フェミ・オグノデ(カタール)に圧倒されるレースになった。9月に入ってから10秒0台を2回出して9秒台入りは目前。競技初日の予選では向かい風0.2mの中で後半の50mを流して10秒14とその片鱗を見せると、翌日の準決勝はラスト10mをブレーキをかけるような動作で走って10秒02と格の違いを見せつけた。そして決勝では予想通りに9秒93のアジア新記録を出して優勝したのだ。

 それに対して日本勢は、山縣亮太が予選1組で、昨年10秒00を出している中国の張培萌を抑えて10秒21の1位通過。桐生の代役で出場した3組の高瀬慧も10秒21の1位通過と順調に滑り出し、翌日の準決勝は1組の山縣が10秒17の1位、2組の高瀬は10秒13でオグノデに次ぐ2位と、優勝は無理でも2位と3位は確実だろうと思わせる走りを見せた。

 ところが決勝の舞台で、山縣はキレのないスタートを切ると10秒26の6位。高瀬も10秒0台を狙って硬くなり、中国2番手の蘇炳添にさされて3位という結果に終わった。

 山縣は「準決勝が終わった後に右股関節の痛みが出た。去年からこのレースに照準を合わせていたのに、本当に何をやってるんだろうという感じ」と悔しさを滲ませた。そして高瀬も「メダルは嬉しいが、良くて金、悪くても銀と思っていたので悔しいのも半分」と語った。(高瀬はレース後に左臀筋の肉離れが発覚した)

 そのため、翌29日に行なわれた4×100mリレー予選は、山縣が「無理をしないように」と1走を務め、2走は飯塚翔太、3走はケガで出場辞退の渡邉和也に代わって、4×400mリレー要員として代表に追加されていた高平慎士が入り、4走は原翔太が務めた。高平はその約2時間後に1600mリレーも走るハードスケジュールをこなした。

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