【世界陸上】リオデジャネイロ五輪へ、期待を抱かせてくれた若手たち (4ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純●写真 photo by Tsukida Jun

 一方、女子で光ったのは、1万mの新谷仁美(25歳)。積極的なレースをしての5位入賞だ。

「本当は最初から1000mを3分3秒で引っ張っていくレースをするつもりで練習をしてきたんです。でも代表チームで11年の世界陸上から見てくれている永山忠幸コーチ(前・日本陸連女子中・長距離部長)が『最初から出たら、新谷が思っている以上にきついものがある。だから試しに4000mまで前に出るのは我慢してみろ。今年の新谷は、去年までと違って走りを切り換えることもできる。そこからは好きな様に走って7000mまで引っ張れば、今回のメンバーならドンドン脱落していく』と言われて。だからそれを信じてやってみたんです」

 序盤は我慢した新谷が3500m過ぎから前に出て引っ張り始めると、その言葉通りに次々と選手が脱落した。そして7600mを過ぎると新谷の後ろはエチオピアとケニアがそれぞれ二人ずつという展開になった。

「5人になった時点で、ラスト勝負になったら私が絶対に不利だと思いました。だからラスト1000mでもいいから誰か出てくれないかな。そうすればチャンスも生まれるかもしれないと思って走っていたけど、誰も出てくれなくて」

 結局はラスト500mから優勝したティルネシュ・ディババ(エチオピア)が仕掛けて、激しいスパート合戦になった。新谷はそこで突き放されて5位になったが、それも彼女自身がレースを支配した上での結果。8000m過ぎでは1周74秒で引っ張る新谷のペースに、ケニア勢が一瞬遅れるようなシーンもあった。もしそこで彼女が1周のペースを72~73秒に上げていれば、残るのはエチオピア勢2人と新谷だけになり、メダルに絡むこともできただろう。

 その意味で彼女の走りは、最後のスプリント力で絶対的に不利な日本人が、メダルに絡むための唯一の方法論を提示してくれたともいえる。「記録は30分56秒70の自己新だけど、あと10秒は速くいける練習をしていたので残念です。でもゴールしても倒れるところまでいっていないから、まだチャンスはあるかなと思います」と新谷は今回の走りを前向きに捉えている。

 他にも、桐生や山縣とともに4×100mリレーの主力選手である飯塚翔太(22歳)は男子200mで準決勝に進出した。予選の成績から準決勝はカーブのきつい1レーンで走ることになり敗退したが、この経験から、今後決勝進出を狙うために必要な課題を得ることが出来たはずだ。

 また、出場選手ではランキング1位でレースに臨んだ男子20km競歩の鈴木雄介(25歳)は、5km過ぎから飛び出して優勝を狙う果敢な歩きを見せた。結局は体調のピークがズレたことが原因で失速し12位に終わったが、金メダルを狙う果敢な歩きをしたことは次につながるものだった。

 メダル1、入賞7と大会前に掲げた目標(メダル1、入賞5)をクリアした日本チーム。その中でもリオ五輪での活躍に希望を持たせてくれた選手たちの活躍は、今後を占う上でも心強いものだったといえる。

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