2013.07.06

【続・東京マラソンへの道】
有森裕子さんに「市民ランナーの心得」を聞きました

  • 中島彩●文 text by Nakajima Aya
  • 阿部卓功●写真 photo by Abe Takanori久慈真史●ヘアメイク Hair & Make by Kuji Masafumi

市民ランナー・中島彩の「続・東京マラソンへの道」@番外編
バルセロナ五輪銀メダリスト・有森裕子さんインタビュー(後編)

 みなさん、こんにちは! 『走るフリーアナウンサー』の中島彩です。前回に引き続き、今回も「市民ランナーの素朴な疑問」に答えてもらった有森裕子さんのインタビューを紹介したいと思います。前回は、練習しているときに浮かんだ様々な疑問について相談しましたが、今回はケガについてや、大会に出たときに感じた悩みを聞いてもらいました!

いつも全力な私に対して有森裕子さんから適切なアドバイスをいただきました!   ☆ ☆ ☆

中島 今回、特に有森さんに相談したかった悩みは、ケガのことなんです。ランナーの友人たちも、一番そのことについて悩みを抱えていました。走り始めて1年ぐらいは、全然ケガをしなかったんです。しかし2年目に入ると、急にケガが出るようなりました。同じような時期にマラソンを始めた友人も、まったく同じタイミングでケガをしています。足底筋膜炎や坐骨神経痛など、マラソンを始めるまで聞いたことのなかった症状です。まず、ケガしないためには、どう対策しておくべきでしょうか?

有森 それはみなさん、足を鍛えることばかり気にして走るから、ケガになってしまうんです。重要なのは足ではなく、体幹なんですよ。上半身ってすごく重いでしょ? でも、誰もその重さに意外と気付いていません。前述した足底筋膜炎や坐骨神経痛は、全部下半身の症状ですよね。みなさん、胴体を重りのままの状態で走っているから、足に筋力がついてもケガしてしまうんです。それを改善するには、上半身を鍛えるメニューをもっと取り入れないとダメ。腹筋、背筋、腕立て、懸垂など、上半身を鍛えているか否かで、足への負担は大きく変わってきます。

中島 たしかに上半身は、あまり意識してなかったかもしれません。

有森 そして故障してしまった場合は、ちゃんとケアしないとダメですよ。痛みがあるなら走らずに、絶対に休んだほうがいい。市民ランナーに言っておきたいのは、痛みが出たら必ず走るのを止めてください、ということ。みなさんは、走るのが仕事ではないのですから。たとえば、1箇所に痛みが出たら、人は潜在的にその部分を庇(かば)おうとするんですよ。だって、痛い部分に力を入れたくないでしょ? そうすると、体重をかける位置が全部変わってしまいます。右足が痛いと思ったら、自然と左足に体重を乗せるようになるんです。そうすると今度は、左足が痛くなってしまう。そして、左足を壊す。だから痛みが少しでもあれば、しっかり痛みを取ってから、バランスの良い身体に戻してあげること。そうしないと、身体が歪んでくるし、その結果、不健康になるという悪い流れに......。「走ること=健康」だったはずなのに、これでは本末転倒ですよ。

中島 はい。耳が痛い話ですね。

有森 走ることにハマると、みんな忘れてしまうんです。「何のために走っているのか?」ということを。タイムを伸ばしたい気持ちは十分わかりますが、身体を壊したら、身も蓋(ふた)もありません。みなさん、勇気を持って休んでください。神頼みのように足に湿布をペタペタ張って、それにすべての願を込めて走っている人もいるじゃないですか? でも、それをやり始めると、身体には本当に良くないですよ。足が痛くて明日のレースを取り止めても、人生終わりではないんですから(笑)。