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小田凱人の鼻を折った宿敵ヒューエットの執念 車いす版「フェデラー/ナダル」のライバル物語 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【ヒューエットが考えた小田対策】

 たとえば今大会の序盤、最近のフィジカル強化の理由についても、次のように語っていた。

「パラリンピックが終わってから、ちょっとずつ(体が)大きくなってきて、ショットもスピードも上がってきた。自分を高める意味でトレーニングしているし、今は対戦相手の対策とか研究もしてなくて。自分にフォーカスを当ててすべてやっているし、僕にはそっちのほうが合っている」

 同時にヒューエットについても、こう口にしていた。

「前は、アルフィー(・ヒューエット)と試合となったら、すごく気合い入れていました。でも今は、そんなに意識していない。本当に自分に集中しているし、一歩引いて見たときに、もう勝てるなと」

 これらの発言も小田流の、言葉にすることで負けられない状況へと自分を追いこみ、闘志を駆り立てる手法だったかもしれない。

 ただ、対するヒューエットは、緻密に、極めて実践的に、小田に勝つ道を模索していた。

 その際たる例は、左効きの小田対策として、左利きのヒッティングパートナーに帯同してもらったことである。

「多くのすばらしい選手たちに敬意を表しているので、ひとりの特定の選手に100%フォーカスしているわけではないのだが......」と前置きしたうえで、ヒューエットはこう言った。

「自分のなかで、左利き対策が欠けていると感じていた。ツアーの選手は80%ほどが右利きだし、コーチもヒッティングパートナーも右利き。決勝まではずっと右利きの選手と対戦し、いきなり決勝で左利きと当たることになる」

 左腕の選手は、ボールの軌道から回転まで、すべてが鏡像になる。その相手と戦う難しさに言及した彼は、こう続けた。

「だから今回の遠征では、左利きのヒッティングパートナーに帯同してもらった。そして一日も欠かさず、彼と練習したんだ」

 その成果は、「サーブへの慣れや跳ね方への対応力に発揮された」とヒューエットは言う。そのヒッティングパートナーに白羽の矢を立てた理由も、「トキトと似た球種を打つからだ」とも......。

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