16歳のプロ車いすテニスプレーヤー・小田凱人は、経験を積み重ねて今季飛躍中。全米オープンは「本気で優勝を狙いにいく」 (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • photo by Getty Images

憧れの「真っ白」のウエアに袖を通して

―― その後、世界ランキングを8位まで上げて、ウインブルドンはワイルドカードで出場が決まりました。フランスから帰国して、グラスコートへの準備期間は約1カ月。どんな練習をされたんでしょうか。

小田 実は、グラスコートの試合は経験がなくて、ウインブルドンが初めてでした。プレーしたことがないから、逆に相手の意表を突くようなショットが効くかなとか、いろいろ考えていましたが、低いボールが生きるサーフェスだから、スライスやスピンサーブの練習に時間を割きました。

―― 結果は1回戦でジェラード選手(ベルギー)に敗れました。実際にプレーして得た気づきや手ごたえ、そして課題はいかがですか?

小田 一番プレーしづらいサーフェスでした。クレーよりも速い展開が必要で、サーブが得意なジェラード選手に対して、なかなか自分のリターンでポイントが取れなかったです。車いすのトーナメントが2週目なので、始まる時点で芝が消耗されていて、ベースライン付近はクレーじゃないかっていうくらい砂の状態でしたし、イレギュラーもたくさんしてしまいます。ただ、逆に芝が削られている分、思ったよりも車いすを漕げたのが、いい意味で予想外でした。

――試合以外での思い出はありますか?

小田 ウインブルドンでは、名物のいちごを食べました! それから、ウインブルドンはやっぱり「真っ白のウエアを着る」というのがすごく楽しみだったので、実際にプレーできてすごくうれしかったです。僕にとってエネルギーになるというか、特別だなと思いました。

―― プロ宣言を経て、以前からの練習拠点でもある岐阜インターナショナルテニスクラブで指導を受けている熊田浩也コーチが、海外の大会も帯同するようになりました。これも飛躍のカギですね。

小田 一緒に海外ツアーも周っていけるのは、ものすごく心強いです。同じ現場で経験したことを、帰国してからも共有できますし、本当に有難いです。

―― SNSではメッセージを英語でポストされていますね。日本のみならず、海外のファンからも応援コメントが寄せられていました。

小田 海外ツアーを転戦しているので、英語で書くようにしていますね。フランス語やスペイン語は翻訳ソフトを使って。海外の選手が日本語で書いてくれたらうれしいなと思っているのでトライしています。英会話は成長したかなと思うけど、グランドスラム(のスピーチ)で話せるかって言われると......、緊張しちゃいます(笑)。

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