パラ陸上競技で金メダル、佐藤友祈の強さの秘密。プレッシャーも緊張も言葉にして楽しむ (2ページ目)

  • 瀬長あすか●取材・文 text by Senaga Asuka
  • photo by Asahara Mitsuaki/X-1

「夢は叶えるもの」をモットーに掲げ、世界のトップ選手になった今も、実現させたいことは次々と口に出し、多くの人を巻き込むことで協力者を得ている。

 金メダルへの最初の挑戦は、5年前のリオパラリンピック。400mと1500mの2種目で銀メダルという結果だった。両種目とも、アメリカの強豪選手レイモンド・マーティンに敗れる結果だっただけに、東京パラリンピックにかける思いは強かった。

 2018年には400mと1500m、2019年にはパラリンピック未採用の800mと5000mで自己ベストを更新。400mと1500mの世界記録保持者として東京大会に向かっていた佐藤は「世界記録を更新して金メダルを獲得する」という高い目標を掲げ、トレーニングに励んでいた。だが、2020年3月、新型コロナウイルス感染拡大の影響で東京大会は1年延期になった。

 いつもポジティブな佐藤とはいえ、すぐ目の前にあった金メダルという目標を実現する舞台を奪われ、さすがに不安な気持ちは隠せなかった。

 しかし、そこで沈黙していたわけではなかった。1年延期された東京パラリンピック開催を待たず、佐藤は今年1月に、5年半務めた企業を退社。競技環境の整った実業団チームを離れて、プロ選手になったのだ。

 自ら支援者を得て、自分の価値を高めるために発信する――。プロの環境が佐藤の力になった。音声メディアなどSNSを通じていろいろな人にパラスポーツや佐藤友祈について知ってもらおうと発信を始めたことで、応援してくれるファンを獲得。3月の日本パラ陸上競技選手権大会にはパラスポーツでは異例の約30名のファンが会場に足を運び、拍手やスティックバルーンを使った応援で東京パラリンピックに向かう佐藤を後押しした。会場の外でファンと記念撮影する姿はまさにプロアスリートそのものだった。

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