日本のエース、鈴木孝幸が集大成で臨む東京パラ。5種目でメダル獲得を目標に掲げ、まずは初戦で銅メダル

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 また、鈴木の場合は呼吸時に手の掻きが小さくなるとグラハムコーチに指摘され、平泳ぎでは2回に1回の呼吸から4回に1回に変更。タイムは金メダルを獲った北京大会以来の48秒台まで伸び、世界ランキングでもメダル圏内まで復調したことで、「残りの期間も東京を目指していこうという気持ちに変わった」と、ターニングポイントを振り返る。

 さらに、鈴木にとってはクラス変更が"追い風"となった。18年のクラス分けの規定の変更で、鈴木は自由形がS5からより障害が重いS4に変更になったのだ。「選手にとってクラスが変わるとことは、本当に世界が一変してしまうということ」と鈴木。もとのクラスで金メダルを獲っていた選手でも、ひとつ軽いクラスに上がれば一気に上位からはずれてしまう。逆に、鈴木のように進行性の病気ではなく欠損で、障害もパフォーマンスも変わらないのに、クラス分けの制度によって変更になることもある。

「私の場合は、はっきり言ってラッキーでしかない。クラスが変わった時点でいきなり世界ランクは1位になり、世界記録も出した」

 とはいえ、同じようにクラスが変わった選手もおり、状況は変化していく。「結局は努力をしないとメダルは獲れないので。その部分では一緒」と鈴木は冷静に捉えている。

 今回のパラリンピックでその自由形は、50m、100m、200mにエントリーしている。世界ランクはいずれも3位につけており、メダル圏内だ。

「金メダルへの想い? もちろん、狙っている。残り4種目、すべて金メダルを目指して頑張りたい」

 進化を続ける34歳の目が、鋭く光った。

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