2020.07.03

車いすフェンサー藤田道宣は、
無意味と言われたことを武器にして勝つ

  • 荒木美晴●文 text by Araki Miharu
  • photo by Yohei Osada/AFLO SPORT

東京五輪&パラリンピック
注目アスリート「覚醒の時」
第33回 車いすフェンシング・藤田道宣
アジアパラ競技大会(2018年)

 アスリートの「覚醒の時」――。

 それはアスリート本人でも明確には認識できないものかもしれない。

 ただ、その選手に注目し、取材してきた者だからこそ「この時、持っている才能が大きく花開いた」と言える試合や場面に遭遇することがある。

 東京五輪、そしてパラリンピックでの活躍が期待されるアスリートたちにとって、そのタイミングは果たしていつだったのか......。筆者が思う「その時」を紹介していく――。

色々なことにチャレンジしながら強くなっている藤田道宣 車いすフェンシングは、ピストと呼ばれる装置に車いすを固定し、2名の選手が向き合って戦う。男女ともフルーレ、エペ、サーブルの3種目があり、それぞれ障害の種類や程度によって2つに分けられたクラスごとに順位を争うもので、パラリンピックでは1960年の第1回ローマ大会から正式競技として行なわれている歴史あるスポーツだ。

 より障害が重いクラス、カテゴリーBのフェンサー藤田道宣(日本オラクル)は、フルーレで世界ランキング11位、エペで同17位につけている。それぞれ日本人最上位だ。リオパラリンピックの出場を逃した悔しさをバネに猛練習を重ね、この4年間で成長を遂げてきた。

 その過程で経験した「覚醒の瞬間」――。それは2018年にインドネシア・ジャカルタで開かれたアジアパラ競技大会だ。藤田はメイン種目のフルーレで銀メダルを獲得。しかも、準決勝で"大きな壁"を乗り越えての表彰台だった。