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車いすフェンサー藤田道宣は、
無意味と言われたことを武器にして勝つ (2ページ目)

  • 荒木美晴●文 text by Araki Miharu
  • photo by Yohei Osada/AFLO SPORT

 準決勝の相手、イラクのアマル・アリは2016年のリオパラリンピックのエペで銀メダルを獲得している強敵で、両者の試合の通算成績はここまで藤田の0勝7敗。4年前の韓国・仁川大会の準々決勝でも敗れており、「ここで彼に勝たないとメダルはない」と藤田はリベンジを誓っていた。

「戦略が必要なエペを得意とするだけあって頭のいい選手。彼は僕がアタックすると引いて捌くんですが、それがうまくて速い。下から跳ね上げる剣の払い方に今までやられていたので、これに対処できれば勝てるとも思っていました」

 藤田は映像で相手のプレーを細かく分析し、緻密な戦略を立てて試合に臨んだ。

 まずは、相手の得意とする形をあえて引き出すことにした藤田。そこから冷静にモーションを見極め、徐々に違うタイミングで剣を出してポイントを重ねていく。そして、相手がフラストレーションを感じながら戦っている様子が垣間見えた後半、勝負どころで一気に引き離すと、15-9で勝利した。

 カギとなる試合に照準を当て、徹底的に対策を立てて勝機を引き寄せた。藤田はアリから「強くなったな」と声をかけられたといい、「この時の勝利は大きな自信になりました」と振り返る。
 
 車いすフェンシングには、より障害が重いカテゴリーCというクラスがある。頸椎損傷で胸から下の感覚がなく、剣を持つ右手の握力がゼロの藤田は、本来はこのカテゴリーCの選手だ。だが、パラリンピックでは実施されていないこともあり、ひとつ上のカテゴリーBにエントリーして戦っている。

「車いすフェンシングは選手同士が向き合って近距離で戦いますが、正直、"遠くて剣が届く気がしない"という気持ちが大きいです。それでも、障害は負ける理由になりません。勝つことだけを考えて、技術もメンタルも鍛えてきました」と話す。

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