2019.08.30

上山友裕は東京パラで有言実行に挑む
「満員の会場で金メダルを獲る」

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 伊藤真吾/X-1●写真 photo by Ito Shingo

「あれは本当に気持ちよかった。プレッシャーに打ち勝った」

 今年の6月に行なわれたパラアーチェリー世界選手権(オランダ)で6位に入賞し、東京2020パラリンピック出場の内定を決めた日本のエース・上山友裕(うえやま・ともひろ/三菱電機)。彼はそう言って、”満点の瞬間”を振り返る。

来年の東京パラリンピックに向けて準備を始めている上山友裕 世界選手権は、ベスト16に残れば東京パラリンピックの出場枠を掴むことができる、という重要な大会だった。その大一番で、上山はロンドンパラリンピック銅メダリストの台湾のTSENG Lung Huiと対戦。優位に試合を進めていたが、終盤に自身のミスショットから同点に追いつかれてしまう。

「ヤバイ……」

 相手にチャンスを与え、一層の緊張感に包まれる上山に、末武寛基コーチはこう声をかけた。

「ほかは9点に当たってました。切り替えていってください」

 残りは3射、時間内にどちらが先に矢を打つかも重要な駆け引きだ。上山は心を決めた。

「先に打った方が勝ちや」

 集中力を上げ、放った矢は見事に10点満点を射抜いた。的まで70mあり、通常は「点」にしか見えない中心から、強い日差しを受けた矢の影がくっきりと出た。それを見た相手は、構えた矢をいったん降ろす。その姿が目に入った瞬間に、上山は相手の動揺を感じ、「いける!」と確信した。

 冷静さを取り戻し、上山は残りの2本も見事、真ん中に命中させた。試合で30点満点を出したのは初めてだったと言うが、その後、重圧から解放された日本のエースは6位まで駆け上がった。

 ただ、目標としていた表彰台は逃した。大会前に「世界選手権で金メダルへの距離、自分の実力を把握したい」と話していたが、予選は14位と出遅れ、決勝トーナメントで優位なポジションに入れなかったことが響いた。また、今大会銀メダルを獲得したエリック・ベネトー(アメリカ)にはシュートオフ(延長戦)で敗れるなど、上位選手との僅差の戦いをどう制するかという課題が浮き彫りになった。上山は「決勝を見ていて、自分もここにいけたなと思えた。東京の本番に向けて、いかにピーキングを持っていくかが重要になる」と、敗戦を心に刻んだ。