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上地結衣、全豪でボコボコの完敗も納得。
女王攻略へ、新たな手応え (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 休みの時もライバルたちの試合動画を見てノートを取るほど、研究熱心な上地がここ最近もっとも力を入れて対策を練っているのも、もちろんデグルートだ。

 昨年の全仏オープン前には、デグルートが手を焼いた中国人のサウスポー選手の戦い方にヒントを得て、全仏オープン決勝では狙いどおりの逆転勝利を掴み取る。低いボールを左右に散らしつつ、勝負どころでは同じコースに続けて打ち、相手の逆をつく策がこの時は奏功した。

 直後のウインブルドンでは、そのライバルとダブルスを組み、圧勝を重ねて優勝する。その時の上地は、優勝よりも、ライバルのプレーをコートの同じサイドから見ることで、得られた情報に価値を見出していた様子。それをどう使うかは、「これからじゃないですかね」と、今後の戦いに目を向けていた。

 迎えた今季開幕戦の「メルボルン車いすテニスオープン」で、上地は3-6、7-5、7-6(11)というデグルートとの壮絶な接戦を制し、頂点に立つ。この時は、ふたたび上地がそれまでと異なる戦術を取り、「相手を戸惑わせた」がゆえの勝利だった。

 だが、それから1週間後の全豪オープン決勝では、今度がデグルートのほうが戦い方を変えてきた。

 小柄な上地はどうしても、バックサイドの高いボールの処理が難しくなる。デグルートは自慢の豪腕を振るい、スピンをかけた弾むボールで、その上地の弱点を徹底して狙ってきたのだ。

 相手が取ってきた"上地攻略法"に、今回はやられた形だ。だが、その敗戦のなかで「唯一よかった」と本人が手応えを掴んだのが、第2セットで決めたボレーである。

「前に出る展開に、今年は取り組んでいきたい」

 そう志す彼女が進むべき先を、そのボレーは指していたからだ。

 多くの選手にとっての上地がそうであるように、今の上地にとってデグルートは、自身を新たな次元に押し上げてくれる存在なのだろう。そのデグルートとのライバル譚の新章が、今年また綴られていく。

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