始めて半年で国際大会優勝。パラ陸上に現れた超新星、井谷俊介はまだまだ伸びる (3ページ目)
目標が決まると、井谷は強い。積極的に思いを口にしたことで、多くの支援者を引き寄せた。今年4月には所属先も決まり、上京。憧れのレーサー、脇阪寿一氏とも出会い、今では「東京の父」と慕う。
国内でも強豪選手に引けをとらない走りを見せる井谷俊介(中央) photo by SportsPressJP/AFLO スプリンターとしての急成長は、脇阪氏から紹介された仲田健トレーナーの指導の賜物だ。陸上経験のない井谷は体の使い方や理想のフォームなどから、試合に向けた調整やアップ方法まで、今もなお「仲田さんから、1から10まで。いや、それ以上に」教わる毎日だという。
まずは、戦える体をつくること。特に、切断によって落ちてしまった右太ももの筋力強化に取り組んでいる。また、すぐに肉離れで苦しんだことで、「アスリートにとってケガが一番怖いと学んだ。これからに生かしたい」と、自身の体と向き合う。
陸上についてもビギナーだけに課題を挙げればきりがないが、裏を返せば、"伸びしろしかない"とも言える。例えば、フォーム。今は脚が後ろに流れるクセがある。体の前で脚を着いてしっかり踏み、地面からの反発をしっかり得て推進力に活かせるように、仲田氏のアドバイスのもと矯正中だ。「義足でどう走るかというより、走りの基本技術を高めたい」と話す。
スタート動作も課題だ。前傾姿勢を保てず、すぐに体が起きてしまうので、スムーズな加速につながらない。そもそも、スターティングブロックも今年に入って使い始めたばかり。スタンディングリアクションタイムの改善も含め、まだまだ練習が必要だ。
仲田氏がかける言葉はまた、胸の内を察したかのように的確で、「心まで整えられている」という。例えば、関東大会のスタート前、ガチガチに緊張していると、「今の君が勝つとは誰も思ってないよ。今できる自分の走り、ベストを尽くしなさい」と言われ、プレッシャーが解けてリラックスでき、好結果につながったと振り返る。
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