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国枝慎吾が新コーチと始動。
ラケット、車いすも新たに全仏へ挑む (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 岩見コーチは、現役時代15年間にわたってプロツアーに参戦し、グランドスラム予選出場や全日本選手権ダブルス優勝などの実績がある。指導者になってからは、フェドカップのコーチを兼任するなど、プロ選手やトップジュニア選手を教えてきた。車いすテニス選手の指導は国枝が初めてで、「勝って当然のところにいる選手だから、プレッシャーはめちゃめちゃありました」と話す。

「僕自身の経験にもなるので引き受けましたが、彼の人柄によるところが一番大きいですね。テニスに対する好奇心は本当に強いし、互いに成長できる関係だと思います。僕は戦術からはめ込むコーチングスタイルで、たとえば、ここに配球しようと言ったら、技術力が高い彼はそれをすぐに再現できるから、より重点的に練習できる。前任コーチの丸山(弘道)さんが、慎吾にここまでのスキルをしっかり習得させたすごさを感じています」

 ふたりのテーマは「一歩、先に行く」。いまや男子の上位トップ8の選手たちは実力が拮抗しており、誰が勝ってもおかしくない群雄割拠の時代に突入している。そのなかで頭ひとつ抜けるには、やはり相手に対する戦術をいかに用意するかがポイントになる。現在は、威力が増したショットを"効率よく"配球することを念頭においた、パターン練習を行なっているという。

 その戦術の「引き出しの多さ」は、早くもジャパンオープン(5月14日~19日・福岡県飯塚市)で発揮された。準決勝のグスタボ・フェルナンデス(アルゼンチン)戦では、ファイナルセットでショットのパターンを変え、一気に引き離した。「それは勇気がいることなんです。相手は世界2位で、失敗したら反撃を食らってしまうから。だけど、それをやり切るのが、いまの慎吾の強さだと思います」と岩見コーチ。また、国枝自身も「(パワーヒッターの)フェルナンデス相手に、フォアハンドでウィナーを量産できた」と、手ごたえを感じている様子だ。

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