パラトライアスロン秦由加子。
「大腿義足で5kmを走る」ことの凄さ

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by MATSUO.K/AFLO SPORT

横浜大会では、6位で悔し涙を流した秦由加子横浜大会では、6位で悔し涙を流した秦由加子 早朝から青空が広がった5月12日、「ITU世界パラトライアスロンシリーズ」の今季初戦となる横浜大会が横浜市山下公園周辺特設コースで行なわれた。雨中だった昨年大会に比べて、スタート前の気象コンディションは気温17.8度、水温17.1度と好条件でのレースとなり、出走した70人の世界トップ選手の中には、好タイムを記録した選手も少なくなかった。

 リオパラリンピックで6位入賞し、PTS2クラス(立位・大腿切断など)に出場した秦由加子(はた ゆかこ/マーズフラッグ/稲毛インター)もそのひとりだ。だが、ゴール後、待ち構える報道陣の前に立った途端、大きな瞳からは涙があふれ出し、秦は両手で顔を覆った。

 昨年は4位となり、表彰台を目指して臨んだ今年、秦はゴールタイム1時間25分36秒と、自身のコースベストではあったものの、同クラス女子7人中6位。得意のスイムでトップに立つも、バイク、ランと徐々に順位を落とし、優勝したアリッサ・シーリー(アメリカ)からは8分近く遅れてのゴールだった。

「たくさんの応援、ありがとうございました。結果につなげられなくて、すみません。これからまた、がんばります......」

 絞り出した言葉は、感謝とお詫びと、決意だった。

 レースに手応えはたしかにあった。苦手なバイクで食らいつき、ランも好タイムをマークした。だが、武器であるスイムはトップで上がるも、圧倒的なリードは奪えなかった。

「やらなければならないことは、まだたくさんある」。

 世界も成長し、その差が詰まっていないことを痛感したのも、また確かだ。

「今回の課題をコーチと明らかにして、今後の練習で意味あるものを積み重ねていかねばならない。必ず、やっていきます」

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