東京の新種目パラバドミントンで金メダルを狙う。正垣源の頭脳と身体 (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 佐山篤●写真 photo by Sayama Atsushi

 今回の日本大会は、このムルースに加え、世界ランキング1位のチアー・リエック・ハウ(マレーシア)もエントリーしている。さらに、これまでアジアパラ競技大会のみに派遣されていた中国の選手も参加を予定。普段の試合ではあまり顔を合わせることがないだけに、怖い存在だ。いずれにせよ、どの国もどの選手も、東京パラリンピックに照準を合わせてきていることがわかる。「今回は世界選手権以上の規模になると思います。そのなかで自分がどれだけやれるか。ここで勝てばパラリンピックのメダルも近くなる。挑戦したいと思います」と正垣。抱負を語る口調はいつものように穏やかだったが、その眼は鋭さを増していた。

 SU5のクラスでは、一般のバドミントンとほぼ変わらないプレーが展開される。ただ、上肢障がいと一言で言っても、肩から欠損している場合や、手首から先だけ欠損している場合など、その部位や程度はさまざまで、プレーにも影響する。たとえば、生まれつき右腕の肘から先が欠損している正垣は、身体の左右差によってバランスが崩れ、プッシュやドライブなど速いショットの処理の際に身体がぶれやすくなるという。

 また、欠損側の右脇下の筋肉が少なく、右肩は脱臼しやすいうえ、腹筋にも左右差があるのだという。実は正垣自身、筋力差があることを知ったのは、転職をして個人トレーナーにつくようになってからのことで、これをフィジカルトレーニングで取り戻そうとしている。現在は時間をかけて身体をつくっているところだが、最近の好調さは、こうした身体への丁寧なアプローチと、倍近くに増えた練習量に支えられているようだ。

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