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「自分をよく思わない人もいる」「自分は競輪界のヒール」と阿部拓真 笑顔の裏にある不屈の闘志と努力の日々を語る (5ページ目)

  • text by Sportiva

阿部は日々努力を怠らない photo by Gunki Hiroshi阿部は日々努力を怠らない photo by Gunki Hiroshiこの記事に関連する写真を見る

【競輪界のヒールでいい】

 2026年はいよいよ男子競輪選手約2200人のトップ9「S級S班」として戦うことになる。その称号はプレッシャーなのか、それとも楽しみなのか聞いてみると......。

「半々です。これまではGⅠに毎回出られるような選手じゃなかったのに、2026年の1年間はそういう舞台が用意されているので、やっぱり楽しみはあります。ただS級S班として求められているものがあると思うので、プレッシャーがのしかかってくるかなと思います」

 そして自分の実力を踏まえ、「弱くて叩かれるイメージもしている」と厳しい声にさらされることも想定済みだ。さらに潔いほどの強い覚悟もある。

「僕は正攻法で戦って勝てるタイプの選手ではなくて、持てるものを全部出して、どんなことをしてでも1着や確定板を目指すことにこだわり続けてきました。隙間・隙間を狙う"隙間産業"で戦ってきて、レースをかき回してしまうので、ファンの方のなかには自分のことをよく思わない人もいると思います。それこそ自分は"競輪界のヒール"だと思っています。それでも泥臭くやってきたから、今があると思います」

 本人は"競輪界のヒール"と言うが、がむしゃらに努力してきた姿勢は"競輪界の鑑(かがみ)"と言えるものではないだろうか。そして阿部は力強くこう続けた。

「(S級)S班としてふさわしい選手になれるように努力していかないといけないと思っています」

 阿部はこれまでもがむしゃらに努力をしてきた。そして今後はさらに努力を重ねるだろう。何度転んでも立ち上がって挑み続ける不屈の精神を持つ阿部。そして決して人のせいにはせず、ヒールになってでも勝負にこだわる潔さもある。

 競輪は、努力がすべて報われるような、そんな甘い世界ではないが、競輪の神様や勝利の女神がいるとするならば、愚直に前向きに挑み続ける阿部の姿に微笑み、競輪祭では、彼の背中をそっと押してくれたのかもしれない。今後の阿部の姿勢が、どのような結果に結びついていくのか、今から楽しみで仕方ない。

【Profile】
阿部拓真(あべ・たくま)
1990年11月3日生まれ、宮城県出身。高校1年までサッカーに励み、その後自転車競技に転向。大学でも競技に没頭し、4年時には全日本大学対抗自転車競技大会でケイリンとチームスプリントで2位、全国都道府県対抗自転車競技大会でケイリン1位と結果を残す。2015年に競輪選手としてデビューし、2025年11月のGⅠ「競輪祭」で初優勝を果たした。

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