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「自分をよく思わない人もいる」「自分は競輪界のヒール」と阿部拓真 笑顔の裏にある不屈の闘志と努力の日々を語る

  • text by Sportiva

爽やかな笑顔が印象的な阿部拓真 photo by Gunki Hiroshi爽やかな笑顔が印象的な阿部拓真 photo by Gunki Hiroshiこの記事に関連する写真を見る

【衝撃を与えた競輪祭】

「下剋上」「番狂わせ」「前代未聞」

 そんな見出しがメディアに躍り、競輪界を大いににぎわせた11月末のGⅠ「競輪祭」。その主役が、GⅠ決勝初出場にして初優勝を成し遂げた、阿部拓真(宮城・107期)だ。本人も「自分はただの選手で、GⅠを獲れるような実績も実力もない選手」と語るとおり、この競輪祭の選考順位は108人中76位で、GⅠ準決勝すら初めてのこと。「夢だと思っていたことが現実に起きた」と驚きの優勝だった。

 それは北日本の選手たちや練習仲間も同じ思いだったようで、「数々のGⅠを見てきた新田さん(新田祐大/福島・90期)が、『こんなに大爆笑した優勝は初めて見た』と言ってくれました」と、レース後の胴上げでは驚きと笑いの渦に包まれた。

阿部拓真の優勝で競輪界は湧きあがった photo by Takahashi Manabu阿部拓真の優勝で競輪界は湧きあがった photo by Takahashi Manabuこの記事に関連する写真を見る この優勝により、12月30日(火)の「KEIRINグランプリ2025」への出場も決まった。

「(グランプリに出場する選手たちは)みんな強くて自分はその選手たちに比べて本当に弱いので、レースになるか正直不安があります」と謙遜しつつも、「出るからには何が起きるかわからないので、チャンスをもらった以上は応援してくれている人たちのためにも、しっかりと1着を目指して戦いたい」と意欲も見せた。

 これらの発言からもわかるとおり、彼は常に謙虚さを保ち、誠実な姿勢を崩さない。さらに「(自分は)いつもヘラヘラニヤニヤしている」と自嘲気味に語るが、笑顔を絶やさない阿部は誰からも慕われる"愛されキャラ"でもある。

 取材中に何度も「自分は無名の選手」と語った阿部が、どのようにして"有名な選手"になったのだろうか。デビューから11年目。35歳にして初戴冠を手にしたのは単なる偶然だったのか。

 阿部の過去を振り返ると、そこには転がり込んできたチャンスをしっかりとつかみ取れる、それなりの理由があったように思えてならない。

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