寬仁親王牌で嘉永泰斗がGⅠ初決勝&初優勝 「長かった」の言葉に隠された苦難の道のりとは (3ページ目)
【地元開催への出場を目標に】
嘉永は決勝前日に、「やっとここまで来られた」とGⅠ初決勝の感想を語ると、優勝会見でも「(ここまで)長かった」と素直に話した。
嘉永がデビューしたのは2018年7月、20歳の時。ここまでの約8年間で、何度か落車を経験し、ケガも多く、ヘルニアの手術も行なっている。2019年には失格により約3カ月間出場できなかった苦い過去もあり、自暴自棄になっていた時期もあったという。楽しい日々はあっという間に過ぎ去り、辛く厳しい日々は長く感じるものとよく言うが、「長かった」という発言はつまりそういうことだろう。
「昨年は調子を落とし苦しい時期があった」というが、近年ではGⅠの常連で、今年は全GⅠに出場。とくに自身も語るように、準決勝に勝ち進んだ8月のGⅠ『オールスター競輪』の頃から上り調子となり、9月のGⅡ『共同通信社杯競輪』では決勝に進出して4着に入っている。これらのことからも今回の優勝が決してフロックではないことがわかる。
優勝会見では冷静にレースを振り返った嘉永 photo by Kishiku Toraoこの記事に関連する写真を見る また、ここのところの好調は、来年2月に地元・熊本で開催されるGⅠ『読売新聞社杯全日本選抜競輪』への出場権の獲得もモチベーションのひとつだった。今回の優勝で来年は最上位クラスの9人にあたるS級S班で戦うと同時に、同GⅠへの出場もほぼ確実になった。「それを目標にやっていたので本当にうれしい」と嘉永。そして「責任のある位置。プレッシャーがかかると思うけど、負けないようにまたこれから練習していきたい」と気を引き締めた。
2025年に残すビッグレースは、11月19日(水)からの『朝日新聞社杯競輪祭』と年末の『KEIRINグランプリ2025』。嘉永という新たなスターがどんな旋風を巻き起こしてくれるのか、そしてこの先、競輪界にどんな変化をもたらしてくれるのか、今から楽しみだ。
【Profile】
嘉永泰斗(かなが・たいと)
1998年3月23日生まれ、熊本県出身。中学まで野球に励み、高校から自転車競技を始める。高校卒業後に競輪学校(現:日本競輪選手養成所)へ入学し、2018年、20歳で競輪選手デビューを果たす。2020年にS級2班に特別昇級し、2022年からS級1班となる。2025年9月のGⅡ「共同通信社杯競輪」で4着となり、同年10月の「第34回 寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント」でGⅠ決勝初出場初優勝を飾った。
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