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大の里が目指す「唯一無二の横綱」 大相撲取材歴70年以上の元NHKアナ・杉山邦博が語るその魅力と将来像 (2ページ目)

  • 文/荒井太郎 text by Arai Taro

【元NHKアナが挙げる大の里の魅力とは?】

 将来の大横綱としての期待がかかる超逸材について、相撲を現場で70年以上も見続けている元NHKアナウンサーの杉山邦博氏(94歳)は、久々に誕生した"国産横綱"についてこう語る。

「私は2024年秋に『来年の名古屋場所までには横綱になる』、つまり2025年の名古屋場所までには横綱に上り詰めるだろうと一部紙上に断言するコメントをしました。まさにそうなったことをうれしく思うとともに驚いてもいます。久しぶりに角界を今後、十数年にわたって引っ張っていくことが期待される横綱が誕生して喜んでいます。私も71年数多くの横綱を見てきましたが、大の里の姿がオーバーラップする過去の横綱はいません。それだけ、唯一無二の力士だと思います」<『杉山アナの(アンチ)巨人、大鵬、卵焼き』(大空出版)より抜粋>

 幕下10枚目格付け出しデビューから所要13場所での横綱昇進は、第54代横綱輪島の21場所を大幅に更新する史上最速出世である。新入幕から所要9場所も年6場所制では、大鵬の11場所をも上回った。

「30年、50年に一人の逸材と言ってきましたけど、この先もその期待に応えてくれる力士であることを確信しました」と杉山氏<同書より抜粋>。

 横綱昇進伝達式では「唯一無二の横綱を目指します」と力強く口上を述べた。いまだ伸びしろ十分の25歳が目指す「唯一無二の横綱」としての将来像は誰にも想像できない。杉山氏が思い描く未来の横綱・大の里の姿は、どのように映っているのだろうか。

「今もすでにすばらしい相撲を取っていますが、やはり右四つに組み止め、左上手をしっかり取る型を身につけてほしいと思います。かつて大鵬さんは『負けない相撲』を取って優勝回数を重ねていったことに対し、『大鵬の相撲は面白くない』とよく言われたものです。大の里もいずれ、負けない横綱になるのは間違いない。その時は大鵬さんと同じような言われ方をされるでしょう。僕はそれでいいと思っています。今後10年、あるいはそれ以上、ケガや故障がなければ、独走態勢を作る可能性は十分あるでしょう。優勝回数も20回どころか、30回以上も夢ではないと思います。あれだけ盤石な相撲を取っていれば、向かうところ敵なしですよ!ごまかしのきかない正攻法の相撲は、彼の最大の魅力です。願わくば、栃若、柏鵬、輪湖と言われた時代があったように、彼にも立派な好敵手が現れることが、相撲界にとっても喜ばしいことではないでしょうか」<同書より抜粋>

杉山邦博(すぎやま・くにひろ)/1930年福岡生まれ。元NHKアナウンサー。名古屋局、福岡局を経て、その後東京、大阪など大相撲の本場所開催地に在籍。「相撲の杉山」と呼ばれる。プロ野球の実況や、第1回東京オリンピック、メキシコオリンピックの実況も担当。東京相撲記者クラブ会友。日本福祉大学生涯学習センター名誉センター長、同大学客員教授。

『杉山アナのアンチ巨人、大鵬、卵焼き』(大空出版刊)

“巨人 大鵬 卵焼き”は、なぜ昭和の子供たちに支持されたのか。相撲と野球は、ラジオやテレビの電波放送により急速に普及をしました。強い横綱や強打者のホームランを観て喜びや感動を共有することができるようになったのです。昭和33年に東京タワーが出来てテレビ時代に突入しテレビが普及。高度経済成長期の昭和36年には大きくて強い横綱「大鵬」が誕生。同時期に巨人がV9を達成し、子どもの好きな言葉を並べた“巨人 大鵬 卵焼き”という言葉が出来上がります。

 カラーテレビの普及、大相撲中継、東京オリンピック。数々の現場に立ち会ってきた生き証人の元NHKアナウンサー「相撲の杉山」さんと相撲ジャーナリストの荒井太郎さんが、当時の昭和を、テレビ放送を、なにより大鵬を熱く語っています。

【CONTENTS】

はじめに

第1章 〝臨場感を共有する〟時代へ

第2章 戦後の第一期黄金時代到来

第3章 高度経済成長期を迎えて

第4章 「柏鵬」の壁と東京オリンピック

第5章 大鵬に見る引き際の美学

第6章 伝承文化と新横綱

あとがきに代えて

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著者プロフィール

  • 荒井太郎

    荒井太郎 (あらい・たろう)

    1967年東京都生まれ。早稲田大学卒業。相撲ジャーナリストとして専門誌に取材執筆、連載も持つ。テレビ、ラジオ出演、コメント提供多数。『大相撲事件史』『大相撲あるある』『知れば知るほど大相撲』(舞の海氏との共著)、近著に横綱稀勢の里を描いた『愚直』など著書多数。相撲に関する書籍や番組の企画、監修なども手掛ける。早稲田大学エクステンションセンター講師、ヤフー大相撲公式コメンテーター。

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