女子ボートレーサー・守屋美穂の強さの源泉は自信のなさ? メモを取る理由、オッズを見ない意味も語る (2ページ目)
養成所では厳しい管理生活が行なわれ、訓練も過酷と言われているが、守屋にとってはそんな記憶は薄いようだ。
「すごく厳しいって聞いていたけど、たぶん自分たちの期(101期)はそこまで厳しくなかったのかなと思います。厳しいというより、学科が大変でしたね。エンジンのことだったり、ルールのことだったり、ゼロから覚えなきゃいけないことばかりだったので」
座学では苦労した守屋だが、在籍当時から非凡なものを見せる。養成所では訓練生同士でリーグ戦を行なうが、守屋は養成所時代に勝率6.76をマークする。守屋と近い世代で女子戦線をけん引する遠藤エミの養成所成績が3.92、平高奈菜のそれが4.80だったことと比べてもその数字の高さがわかる。もちろん男子選手とも争ったうえで残している成績だ。
2007年11月にデビューすると、1カ月後には初勝利。2009年には女子戦で初優出(優勝戦に進出すること)を果たすと、2013年にはついにボートレーサーの最高ランクであるA1級に昇格する。
こう記すと順風満帆なレーサー人生に見えてくるが、守屋に過去のことを尋ねると「覚えていないです......」という言葉がたびたび出てくる。好成績を残した養成所でのことも「たぶん本当に何も考えずに乗っていたのかなって思います」という一言が出てきたくらいだ。
「キャパが狭いというか、前のシリーズでやったことも次のレース場に行くともう忘れちゃっているので、ちゃんとメモを取るようにしています。昨日のことも忘れちゃうし、もし2回乗り(1日に2回のレースに出場すること)だったら後半のプロペラの形しか思い出せないとか。なんかいっぱいいっぱいです」
苦笑いを浮かべつつ自身のことを語る。ある意味で天然とも受け取れる彼女の姿は、レース場にいない守屋美穂の素顔なのかもしれない。「男子に負けない強い女子」の顔はそこにはない。
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