天啓を受け会社員からガールズケイリンへ 二度の大ケガにも「職場復帰する義務がある」と語る石井貴子が掴んだ不変の新境地とは (4ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro


研究熱心な石井。競輪場内部やバンクの特徴などをしっかりメモしているという photo by Hirose Hisaya研究熱心な石井。競輪場内部やバンクの特徴などをしっかりメモしているという photo by Hirose Hisayaこの記事に関連する写真を見る

【これからも目の前のことを精一杯】

 プロであること。この自覚は石井の日頃の立ち振舞いに気品を漂わせる大きな要因にもなっている。

「プロといっても、ほかの多くのプロスポーツ選手と私たちは少し異なる立場だと思っています。見て楽しんでいただくだけでなく、車券を買ってお金を賭けていただいているからです。お客様には公平な情報で予想していただきたいので、自分なりに行動や発言には気をつけるようにしています」

 自身のコンディションやレース内容を語る際にも、客観視して言葉を選ぶクレバーさを持つ。だがそれは意外な理由からでもある。

「私は実は気持ちで走る部分が多くて、そこに任せてしまうと気分の浮き沈みが走りに出てしまいます。ですので、気持ちに舵取りさせることなく、一歩引いて、私自身が石井貴子を見るようにしているんです」

 パールカップの優勝により12月に行なわれるガールズグランプリ2024への出場が決まった。今回はGⅠ開催優勝でその権利を得たが、一昨年までは11月末に行なわれていたガールズグランプリトライアルレースの優勝者や賞金獲得額上位者などが選ばれていたため、石井にとっては「半年前からグランプリ出場が決まっているのは不思議な気持ち」という状態が続いている。

「これまでに走った4回のグランプリとは間違いなく、違うレースになると思います。以前は自分の力でつかんだグランプリ出場だと考えていますが、今回は自分だけの力で出られたと思っていませんし、支えていただいた方たちへの恩返しの気持ちで走ることになります。目の前のレースをひとつずつ精一杯頑張るのは、普段のレースでもグランプリであっても変わりません。その気持ちで臨むしかないと思っています」

 全力で毎日を過ごした先にガールズグランプリがあり、その年に一度の大舞台も、普段と変わらない気持ちで全力で勝ちにいく。その先にどんな結果が待っているか。石井自身がその瞬間を楽しみにしている。

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