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【パリオリンピック男子フェンシング】加納虹輝がエペ個人、フルーレ団体は初の五輪王者に 日本の強さを世界に知らしめる (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【エペ団体の成長を示した銀メダル】

東京五輪時より地力の向上の手応えを掴んだエペ団体(左から見延、山田、古俣、加納) photo by JMPA東京五輪時より地力の向上の手応えを掴んだエペ団体(左から見延、山田、古俣、加納) photo by JMPAこの記事に関連する写真を見る

 仲間と喜びを分かち合うためのエペ団体戦(8月2日)。風は、世界ランキング3位の日本に吹いてきているような状況だった。1回戦では、勝ち上がれば日本と戦うことになる同2位のイタリアが同7位のチェコに敗れた。さらに準決勝では同1位のフランスが同5位のハンガリーに負けていたからだ。

 初戦のベネズエラ戦、中盤まで競り合う展開から39対33で勝利した日本は、準決勝のチェコ戦も終盤に抜け出して45対37で勝利して決勝に進んだ。

 だが、決勝の相手であるハンガリーはゴルバチュクコーチが「エペの長い歴史があり、多くのメダリストを出している国」と言うように、国別は世界ランキング5位だが個人ではゲルゲリー・シクロシが同1位と力のあるチーム。前半はロースコアの展開のなかで3点ほどリードされる形が続いた。

 それでも初戦のベネズエラ戦の途中から見延に代わって入った古俣聖(本間組)が第7試合で16対17と点差を詰める。そして前の2戦でアンカーを務めた山田は2点差にされたが、アンカーの加納がシクロシを相手に一度追いつきながら残り30秒台で再び2点差にされる。しかし残り6秒で25対25に追いつき、オーバータイムの一本勝負まで持ち込んだ。

 だが、「向こうにプライオリティがあるので自分からプレッシャーをかけて最後は飛び込んでいくつもりだったが、相手がけっこう剣を出してきたのでビックリした」と、シクロシのフェイントに思わず反応して剣を振ったところを突かれ、開始46秒で26点目を取られて決着がついた。

「決勝進出が決まったあとで、今まで硬かったので最後はリラックスしてやろうと古俣と話した。金メダルを目指していたのでもちろん悔しさはあるが、楽しく試合ができたし、みんなでメダルも持って帰れるので、うれしい気持ちとホッとした気持ちもあります」

 こう話す加納は、今回の銀メダルを東京五輪の金メダルと比較しながら、日本の実力が上がっていることに自信を見せた。

「前回は開催国枠の出場だったし、ラッキーな部分もあっての金メダルだったが、自力で出場することができたのは今回が初めて。実力で決勝まで上り詰めることができたから、力は間違いなく上がっています」

 山田は、今大会で代表を去るゴルバチュクコーチへの思いをこめて振り返る。

「サーシャ(ゴルバチュクコーチ)には、絶対に何かを持たせたいという気持ちはあった。彼は、僕にとっては父親みたいな存在。決勝は僕のせいで負けたけど、怒ることなく抱きしめてくれて。いつもならメチャクチャ怒られるところだけど、何も言わずに『ありがとう』と言って抱きしめてくれたのは、メダル以上に僕にとってはうれしいことでした」

 そのゴルバチュクコーチは「昨年の世界選手権は10位。そこから盛り返して五輪出場権を獲ったことを考えれば、今日の結果は、金メダル以上にハッピーな気持ちになれた」と手放しで喜んだ。

 2大会連続の決勝は、自分たちの強さを証明する結果でもあった。

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