「死ぬまでこの体型を維持したい」声優・伊東健人が語る日々のコンディショニングと業界の転換点「声優個人に興味を持ってもらえる時代は終わる」 (3ページ目)
【「このアニメの主役って誰だっけ?」は業界にとっていい傾向】
──今後も声優として活動を続けていくなかで、ご自身で描いている道筋は何かありますか?
「漠然とした考えではありますが、業界の変化に対して柔軟に対応できる声優になっていきたいです。というのも、エンターテイメントの世界って数年でガラッと変わるじゃないですか。10年前にはできても、今できないことってたくさんあるし、逆も然り。時代の流れによって、タレントそれぞれに求められる役割も変化してきていると思うんです。
かつては不特定多数の方々が決まった時間にテレビを見て、同じ瞬間に情報を受け取ったり、一喜一憂していた。一方、今は動画配信サービスの普及によって、いつでも、どんな番組でも見ることが可能になっています。視聴者がメディアに求めるものが"自分の好み"になったので、逆に捉えれば演者としての仕事が"不特定多数"から"特定多数"へシフトしてきているということです。
たとえば、スマートフォンの「Siri」やアプリなどに搭載されている音声アシストが今後、AIから声優のボイスに変わったり。今までにない視点から、より個人に向けた仕事が増えていく。そういう時代に突入していると思うんですよ。
仕事に対して昔かたぎの考えを貫くのも、それはそれですごくかっこいいとは思います。僕もその方針でいこうか葛藤した部分はありました。ですが、発展していく社会に目を向け、個人に寄り添ったエンタメを届けたい気持ちが今は勝っているので、世の中の変化に乗り遅れないよう心がけたいと思っています」
──今後はさらに"声優個人"が注目される時代になっていくということでしょうか。
「そうとは言いきれないかな、と。確かにアニメやゲームの人気が拡大して、声優によってコアなファンも多くなってきています。僕自身もこうしてインタビューや、バラエティ出演のオファーをいただけているので、ありがたい限りです。ですが、正直、そういう声優のパーソナルな部分にまで興味を持って踏み込んでもらえるような時代は、だんだん終わりに近づいてきているのでは、と感じています。
以前であれば、声優という仕事を知ってもらえているなかで「あ、この人面白い」「この人の演技すごいな」という入り口から口コミが広がり、認知度が上がっていっていたと思います。ただ今は、たくさんの人気作品が数多くの方々に受け入れられていますが、「あれ、このアニメの主役って誰だっけ?」と、パッと主演の顔や名前が出てこない人のほうが多いと思うんですよ。
でもそれって、声優としての本来の良さだなと、僕は思うんです。見ている人に、演者の顔や人間性を感じさせずにキャラクターの魅力を伝え、その作品を押し上げる。これ自体はすごくいい傾向にあるな、と。それも含めて、声優業界は今、転換期に差し掛かっているなと感じますね」
──最後に、今後の目標を教えてください。
「声優や歌手活動をしていくなかで、俳優さんやお笑い芸人さんなど、各ジャンルのタレントの方々と共演する機会が増えました。それによって感じたのは、声優業界と他の業界との間にまだまだ壁があるということ。いろんなお仕事をさせてもらっている以上、そこは早く取っ払いたいなという気持ちはすごくあります。
声優としての矜持(きょうじ)を持っていさえすれば、ロックフェスにバリバリ出演する声優がいてもいいと思いますし、全く異なるジャンルの仕事に挑戦する人が出てきてもいいんじゃないかなと思うんです。
そのために外の世界との壁を取り除きつつ、業界の枠を超えた取り組みができる環境にしていきたい。すごく贅沢で欲張りな考えかもしれませんが、模索しながら、いろんな声優としてのカタチを見出していけたらいいなと思いますね」
【Profile】伊東健人(いとう・けんと)
10月18日生まれ、東京都出身。声優・歌手。81プロデュース所属。
東京アナウンスアカデミー、81ACTOR'S STUDIOを経て声優としてデビュー。2018年放送の『ヲタクに恋は難しい』(二藤宏嵩役)でテレビアニメ初主演。同じ事務所の中島ヨシキとのユニット「UMake」でアーティストとしても活動を開始。2022年にはソロアーティストデビュー。2024年放送の『月が導く異世界道中 第二幕』のED曲『My Factor』は自身初となるアニメーションタイアップ。
<SportivaのYouTubeチャンネルでインタビュー動画公開中>
https://youtu.be/XsqHla8HlWM
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