楢崎智亜、パリ五輪金メダルは「セッティング次第ですが、可能」 ルール変更で「自分より有利に戦える選手がいるのもわかっている」 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

【パリ五輪での金メダルは「狙っている」】

―パリ五輪に向け、ストレスフルでしょうけど、クライミングの原点とは?

「立ち戻る、で言うと、ボルダリングで自由に登ることですかね。大会のための練習と自分の練習は違うんですけど。自分が動きたいように気持ちよくやるのは楽しめるので、自分の良さが出ますね」

―パリ五輪、金メダルの条件は? 当然、狙っているはずですよね。

「狙っています。ポイントで言うと、自分はボルダリングのほうが得意なので、2位の選手に1カウント差をつけ、リードでトップ選手に4手以内に近づく...そしたら、金メダルです。セッティング次第ですが、可能ですね。まあ、セッターの比重が大きくて、ボルダリングを簡単にしすぎると、全員4カウントでシンプルにリードで争う大会になってしまうんですが...。リードも調子は良くなってきているので楽しみです」

―10歳でボルダリングを始めた智亜少年にタイムマシンで会いに行ったら、なんと伝えますか?

「『頑張ったら、クライミング、楽しくなるよ』って伝えますかね」

―智亜少年は、なんて返してきますか?

「うーん、その頃の僕は素直だったので『頑張るよ』って。僕の場合、ワールドカップのトップ選手の映像とかを見て、"やばい、こうなりたい"って思っていました。中学生の時、ヤン・ホイヤー(ドイツのプロ・クライマー。2010年には、ロック・クライマーにとって世界で最も困難なルートの一つとして知られる「アクシオン・ディレクト」の登頂に成功。2014年のワールドカップ優勝など)っていうドイツの選手がいて、あからさまにムキムキで格好良くて。トレーニングで真似したら、怪我したんですけど(苦笑)。ユースの時、僕はそんなに強くなかったので。だから10歳の自分にもプレッシャーを与えず、楽しく自由にやって欲しいなって思いますね」

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【Profile】楢崎智亜(ならざき・ともあ)
1996年6月22日生まれ、栃木県出身。10歳からクライミングをはじめ、2015年の高校卒業と同時にプロ・クライマーに。ボルダリング種目を得意としており、2016年にボルダリング種目で世界選手権初優勝。2019年の世界選手権ではボルダリング種目と複合種目で優勝。金メダルを期待された東京五輪では惜しくも4位。2024年パリ五輪で悲願のメダルを狙う。妻は女子クライミングの第一人者として知られる野口啓代さん。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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