楢崎智亜、パリ五輪金メダルは「セッティング次第ですが、可能」 ルール変更で「自分より有利に戦える選手がいるのもわかっている」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

【体脂肪率は常時2~4%】

―会場での楢崎選手は、五感を研ぎ澄ませているように映ります。

「課題を見た瞬間、"ホールドの向きなら、この可能性がある"とか、"湿度がこんな感じか"とか。一発の集中力で、一手に集中して登る感じですかね。課題は初見ですが、自分の順番を待っている間、誰がトライしているかはわかっているので、歓声を聞いて沸いているなら、"ちょっとダイナミックな感じかな"とか、蹴った壁の音が大きいと、"ここだろうな"とか予測して。過去のクライミングと照らし合わせて、"あれに似ているから、この登り方かな"とか」

―壁と向き合うのか、自分との戦いか、どちらでしょうか?

「うーん、両方ですが、最近は自分のほうかもしれません。登る前は課題との向き合いですが、登った瞬間からは、いかに自分の身体が思い通りに動くか。無意識で動いているところもあるので、そこは委ねているところが大きいです。ただ、修正力も大事で、最初のトライで課題の情報をどこまで盗めるか。それが経験のあるトップ選手と若い選手との差かもしれません」

―体脂肪も常に2~4%と言われ、鍛え上げて壁と一体化しているように見えますが、自分の体の部位で武器は?

「背中、背筋力は大事ですけど、自分の場合は連動性ですね。蹴って、骨盤が動いて、引いて、という順番。その組み合わせ、コーディネーションが武器かもしれません。おかげで、特別力が強いわけじゃないのに壁の中で力が出せる。タイミングが大事で、純粋な力よりも自重を操るスポーツなので」

―その点、スピード種目は「重力解放」という呪文でも使っているように見えます。

「ロープで釣っているんじゃないの、とか言われますね(笑)。あれもタイミングが大事で、重心が上がるタイミングに合わせて蹴ると、ぐんぐん進んでいくんですが、ちょっとでもズレると重力で下がっちゃうんですよ」

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