不可解なフライングにも負けず。森重航の銅メダル獲得は、スピードスケート男子復活への第一歩 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 森重は、五輪の大舞台に緊張することもなかったと言うが、うしろの組に同郷の先輩でもある新濱が控えていたことで、「自分の滑りをするだけだ」というリラックスした気持ちになれたことが、銅メダル獲得につながったのだろう。

「これで4年後も8年後も目標にできるようになりましたが、メダルは獲ってもまだ自分がエースという実感はないです。ひとつの目標として日本記録はありますが、それを達成した時にエースと言えるのかなと思います」(森重)

 その森重が目標とする新濱は、日本スピースケート男子の状況をこう話す。

「4年前は本当に自分ひとりで戦っていて、そのあとに村上さんや松井大和くんが出てきて3人で日本男子短距離を引っ張ってきたけれど、今シーズンは新たに森重が上がってきました。これまで日本男子を牽引してきましたが、自分が思い描いていた日本のお家芸復活にすごく近づいてきました。自分は獲れなかったけど、後輩の森重がしっかり銅メダルを獲ってくれたので。日本男子短距離としてメダルが獲れたというのは、本当によかったなと思います」

 北京五輪の勝負だけを考えれば、本番に懸けてくる中国と韓国の勝負強さに遅れを取った。だが、これまでのW杯の活躍に加え、五輪でもしっかりメダルを確保したという意味は大きい。日本男子短距離はこれで、名実ともにお家芸復活への道を歩み出せるようになったと言える。

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