北京五輪のメダル最有力候補。スノーボード・ハーフパイプの戸塚優斗は「普段どおりに臨めば金」 (2ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【16歳で平昌五輪に出場】

 もうひとつ、普段どおりを強調する理由は"経験"だ。銀メダルを獲得した平野歩夢と伝説的王者のショーン・ホワイトとの熱戦に日本中が沸いた、前回の2018年平昌五輪。戸塚も高校1年生だった16歳で出場した。

 予選10位で進んだ決勝は1本目で転倒。2本目はファーストヒットからフロントサイド・ダブルコーク1440(縦2回転・横4回転)を驚異的な高度で披露したものの、着地でリップ(パイプ側壁の最頂部)に乗り上げて体を強打。ボトム(底)に叩きつけられて担架で病院に搬送された。

「完全に経験不足だったし、雰囲気に飲まれました。空回りしたというか、テンションを抑えきれない感じで、『やっちゃえ!』的にいっちゃって......」

 戸塚が頭角を現したのは、平昌五輪前年の2017年3月。『第23回全日本スキー選手権スノーボード競技』のハーフパイプに初優勝。日本代表入りを果たした勢いは、平昌五輪を控えた直前のシーズンでさらに加速。キャリア初のW杯で優勝し、W杯種目別でも1位となった。ただ、その勢いだけでは通じなかったのが平昌五輪でもあった。

「いま振り返れば、オリンピックに対しての準備ができていない状態での出場でしたね。ただ、それだけにこの4年間で準備をしっかりできたし、成長もしたと思っています」

 その成長を強く印象づけたのが昨年1月に優勝した『X GAMES』。この大会の決勝最終ランで、戸塚はショーン・ホワイトや平野歩夢が平昌五輪で繰り出したのと同じルーティーンを披露。フロントサイド・ダブルコーク1440(らせん状に縦2回転+横4回転する技)からキャブ・ダブルコーク1440(最初のスタンスとは逆位置から縦2回転+横4回転)への大技を決め、同大会3連覇中だった平昌五輪銅メダリストのスコッティ・ジェームス(オーストラリア)を圧倒した。

「キャブフォーティー(連続して1440を決める技)をやりたかったんですが、あの時点ではまだ左からドロップイン(パイプに入ること)して、それを打てるルーティーンができてなくて。だから、右(バックサイド)から入ったらルーティーンが平昌五輪でショーンと歩夢くんがやったのと同じで。そんな気はなかったのに、めっちゃ宣戦布告だって言われちゃって(苦笑)」

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