カーリング史に残る死闘を制したロコ・ソラーレ。崖っぷちからの3連勝にはワケがある (2ページ目)
連戦の疲れからパフォーマンスが上がらず、連敗を喫したことも一度や二度ではなかった。しかし「今は苦しいけれど、それが力になると信じている」と吉田知。ディティールと勝負にこだわり続けた。
セカンドの鈴木夕湖は、7月の軽井沢合宿でこんなことも言っていた。自身もミスが増え、デリバリー(投石)フォームすら見失いつつある時期だった。
「それでも、試合は続く。場合によっては開き直ることも大事だし、試合までにアジャストできることは自分でして、できないことはチームでコミュニケーションをとって(解決して)いきたい」
そうした意識や姿勢が、まさに今大会で生きた――。
「何度も、何度もチャンスを作っても、何度も、何度もかわされる。2戦目は私のミスで負けた」
藤澤がそう振り返ったように、序盤戦は北海道銀行が巧みにロコ・ソラーレをいなした。特にスキップ・吉村紗也香が幾度となく好ショットを放ってチームを救い、接戦をモノにして2連勝を飾った。
その結果、ロコ・ソラーレはあとがない状態に追い込まれたが、「崖っぷち(での戦い)は何百回もやってきた。私たちはまだ強くなれると信じている」と吉田知。以降も、ロコ・ソラーレの選手たちは皆、調子が上がらなくても、報われなくても、もうこれ以上、負けられないところで、自分たちの積み重ねてきたことを信じて、今できる最善のショットを求め続けた。
象徴的な場面があった。第5戦、1点差に迫られた第9エンドだ。
有利な後攻だったロコ・ソラーレは、藤澤のラストロックの時点でハウス内に石はなかった。あえて得点をとらずに、両者得点が入らない「ブランクエンド」にするのがセオリーだ。そうすれば、有利な後攻の権利を持ったまま最終第10エンドを迎えることができる。
しかし吉田知と藤澤は、ハウスからみて10時方向に残った自軍のハウス外の黄色い石をハウス側に押しつつ、投げた石もハウスの端に残す2点ショット、ダブルロールインの検討をし始めた。
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