開幕まであと4カ月。聖火リレーと東京五輪を世界はどう見ているか
3月25日にスタートした聖火リレー、そして開催まで4カ月をきった東京五輪を、世界はどう報じているのか。イタリア、ドイツ、ブラジル在住のスポーツライターがレポートする。
福島からのスタートは「終わらない悲劇はない」と語りかけてくれた
パオロ・フォルコリン(イタリア)
東京五輪が不運な大会になることは、かなり前からわかっていた。だが、実際に国外からの観客を入れないと決まったことには――その理由は十分に納得できるにしても――やはり残念である。五つの輪に象徴されるスポーツで結ばれた世界も、実感できないだろう。
イタリアでも、特に(不当にも)マイナースポーツと呼ばれている競技のファンの落胆は大きい。日ごろからサッカーに、話題も情熱も吸い取られている彼らにとっては、五輪は数少ないリベンジの場所だからだ。
ただ、正直に言うと、一般的にイタリアでは、サッカーのW杯などに比べたら五輪の人気は低い。イタリア人の興味は、それよりも6月に行なわれるサッカーのヨーロッパ選手権のほうに向いている。
組織委員会のトップが女性蔑視の発言で辞任したなどというニュースも届いてはくるが、イタリア人にとっては目くじら立てて非難することというよりは、どこか笑い話のようなものだ。コロナ禍でロックダウンが行なわれている今、東京五輪が人々の話題に上ることはまだ少ない。
2011年のW杯で優勝したなでしこジャパンのメンバーが第1走者となってスタートを切った聖火リレー だが、聖火リレーが始まったことで、人々の注目度は徐々に高まっている。イタリア最大のスポーツ紙『ガゼッタ・デロ・スポルツ』は見開き2ページで特集を組んでいる。なによりも注目されているのは、その出発点が福島だということだ。これはシンボリックで大きな意味を持つ。福島の原発事故は、10年たった今でもイタリア人の記憶に強く残っている。
衝撃的な悲劇に見舞われた場所から聖火がスタート。テレビでは、津波によって家族を失った男性が聖火を持って走っている姿が映し出されている。今また新たな災厄に見舞われた世界に、「決して終わらない悲劇はない」と語りかけてくれているようだ。今回の聖火リレーをイタリア人はそう見ている。
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