2020.12.10

岩田健太郎は東京五輪に不安。「できない基準が設定されていない」

  • 木村元彦●取材・文・写真 text & photo by Kimura Yukihiko

―― 観客サイドで言えば応援の文化についても変化がありました。野球の応援はサッカーのように局面がころころ変わるわけではなく、間合いの長い様式なので制御の仕方もやりやすいように見受けられました。

「バッターボックスに選手が入るタイミングや、クローザーがマウンドに上がる際の登場テーマ曲。そういうものは録音テープで出せるので問題はなかったですね。あと、打楽器もほとんど問題ないので、ライブで太鼓とかはできます。しかし、ピッピッピッとタイミングに合わせて鳴らす笛とかトランペットは厳しいですね。だから、野球的な応援というのは拍手やプラスチックのバットを叩いて選手を鼓舞する、という方向に行くでしょうね。今の段階で7回裏のジェット風船は飛ばせないですね」

―― 風船はスタンドでマスクを外して息を吐いて膨らます段階から厳しい。

「さらにそれを飛ばしてしまうわけじゃないですか。口から出すものがたくさん風船の中に詰まっていて、それをヒューっと空中に浮遊させるわけだから、飛沫がかなりまき散らされると思います。ジェット風船はヤバいです。あれはやめたほうがいいですが、どうしてもやるんだったら、あらかじめ機械で膨らませて持っておいて飛ばすという、そういう特殊なやり方でやるしかないです。コロナの問題は当面続くので、そういう工夫はあってもいいかもしれません。これまで常識だと思っていたことを考え改めるということは、現在にとってすごく大事な態度だと思います」

―― 野球で言えばドームと屋外の球場というのは、感染に関しては差があるのでしょうか。

「ほとんどないと思います。ドーム球場はオープンエアでないにせよ、かなり会場は広いし、天井も相当高い。換気もドームのほうがしっかりしていたりする。むしろ人と人との距離のほうがよっぽどインパクトは大きいと思います。会場そのものよりもスタジアムに行くまでの(密になった)歩行だとか、試合が終わった後にみんなで飲みに行ったりすることとか、その辺のリスクのほうがはるかに大きいです」

―― 次にサッカーですが、Jリーグも段階的に観客を入れていきました。チームサイドの結果で言えば、結果的に柏レイソルの選手、スタッフから集団感染が報告されて、ルヴァンカップ決勝が延期になりました。

「そうですね。ただ僕が良かったと思うのは、柏レイソルは選手の陽性というのをちゃんと情報公開したことです。Jはおおむね上手くマネージメントをしていると思います。例えば誰が陽性になって、濃厚接触者が何人になって、それ以上の濃厚接触者はいないので今日は試合をしますとか、しないとか。そういう基準をしっかり作って、そして、ルヴァンカップの決勝みたいなものまで、容赦なく試合を中止にして延期するじゃないですか。

 スポンサーに対して忖度しなくて良いのかとか、フアン、サポーターが怒るんじゃないかとか、いろいろ軋轢はあると思うんですけれども、あそこで躊躇しない。しないと決めたらしないという、あの示し方。あれは村井(満)チェアマンの意向なのかどうか知らないですけれども、あそこまで明確に線引きができると安心なんです」

―― 村井さんはジャパニーズオンリー事件のときもそうでしたが、有事の際にリーダーシップを発揮して毅然と英断を示しますね。こういうときはスピードが大切だと理解しているのだと思います。

「そしてレイソルで言えば、選手関係者は感染者を出してしまいましたが、今のところ観客のクラスターって起きてないですよね。僕、実はヴィッセル(神戸)の応援も兼ねて先日ノエビアスタジアム神戸に行ってきたんですけれども、サポーターもみんなシリアスですね。立ち上がっての応援禁止ということで、声も出さないですし、ルールをしっかりと遵守している。その情景はすごく寂しいといったら寂しいですけど、非常に礼儀正しくて頼もしくも感じました」