ブラジル出身・魁聖の角界入り経緯。サンバよりマンガが好きなオタク (2ページ目)

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

 相撲という競技は、人と人がぶつかり合うわけですから、"濃厚接触"が起こりやすい。それに、相撲部屋は団体生活で、ウチの部屋(友綱部屋)の場合も、若い力士は大部屋で一緒に過ごしています。だから、「もし誰か1人が感染したら......」という不安はありましたね。外に出るのが怖かったし、タクシーで移動するのにも、マスクを二重にして、消毒グッズをいっぱい持っていきました。

 日々の稽古に関しても、内容が変わりました。各部屋の師匠の判断になるのですが、力士同士がぶつかり合う稽古はなるべく禁止とされていました。ですから、僕たちは四股やテッポウなどの基本運動を中心に体を動かしていて、7月に入るくらいから、土俵での稽古を再開させました。

 こうしたなか、相撲勘を取り戻すのはなかなか難しかったですね。いつもは場所前になると、ウチの部屋に横綱・白鵬関などが出稽古に来てくれるので、いろいろなタイプの力士と稽古することができました。でも、今や出稽古も禁止ですから、自分の部屋の中だけでの調整でしたからね。

 それと、困ったのが体のケアです。僕は今33歳。昨年は夏場所(5月場所)と名古屋場所(7月場所)のふた場所、ケガで途中休場するなど、結構体にガタがきています。それで、トレーナーさんとか、鍼灸師の先生に部屋に来てもらって治療を受けることが多いんですが、そうした先生も、移動の自粛に伴って頻繁に通ってもらうことができなかった。

 ともあれ、七月場所が予定どおり行なわれたことは、よかったと思います。限られた人数とはいえ、お客様も入れて開催することができましたしね。お客様としては、僕たち力士に声援を送ったり、同伴者と一緒にアルコールを飲んだりすることはNGでしたから、普段とは違う雰囲気に戸惑いもあったと思うのですが、僕たちは拍手をいただけただけで、うれしかったです。お客様たちからの応援って、本当に力になりますから。

 同場所では、元大関・照ノ富士の「復活優勝」で盛り上がりました。序二段まで番付を下げて、そこからの復活でしょ。どれだけ根性があるんだ......って、感心させられるというか、心底驚かされました。僕のほうは、6勝9敗。思い描いていたような相撲は取れなかったけれど、ケガなく終われてホッとしています。

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