五輪メダルをドンドン増やす「国立スポーツ科学センター」って何だ? (4ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 伊藤晴世●撮影 photo by Ito Haruyo


 2008年1月、トップスポーツ界の念願だったナショナルトレーニングセンター(National Training Center=NTC、現・味の素ナショナルトレーニングセンター・ウエスト)が隣に完成。さらに、2019年7月には屋内トレーニングセンター・イーストも目の前にでき、もとからある味の素フィールド西が丘(国立西が丘サッカー場)も合わせて、JISSを中心とする東京都北区西が丘一帯を国は「ハイパフォーマンススポーツセンター(High Performance Sport Center=HPSC)と位置づけている。

ここが日本のスポーツ競技力強化の中枢ここが日本のスポーツ競技力強化の中枢
 久木留センター長は、JISSが中核となるハイパフォーマンススポーツセンターの機能を4つに分けて説明する。
 
「まず1つ目はJISSの科学・医学・情報からのアスリート支援、研究です。2つ目がNTCのトレセン(トレーニングセンター)機能。3つ目が競技力向上などのプログラム、システムの提供。例えば、レスリングなどで実施されている一貫指導の"Pathwayシステム"や、タレント発掘・育成の"J-STARプロジェクト"などです。

そして4つ目が協働コンサルテーション。文部科学省が各競技団体に『4年プラン、8年プランをつくりなさい』と言っているわけですが、JOCやJPCと連携してそのプラン作成と進捗状況を確認し推進しています」

 現在、ハイパフォーマンススポーツセンターには約400名、そのうちJISSには約260名のスタッフがフルタイムで勤務している。久木留センター長のようにクロスアポイントメント制度による大学からの出向者もいれば、企業からの出向者もおり、公募によって入所してくるスタッフもいる。JOC=約60名、スポーツ庁=約130名、日本スポーツ協会=約80名と比べると、職員数だけでも規模の大きさがわかる。次回は、その具体的な機能を細かく見ていきたい。

(つづく)

【プロフィール】
久木留毅(くきどめ・たけし)
1965年12月28日生まれ、和歌山県出身。専修大学文学部教授。
和歌山県立新宮高校でレスリングをはじめ、専修大学でも活躍。卒業後はサンボ日本代表として世界選手権などに出場。
筑波大学大学院で体育学修士、法政大学大学院で政策科学修士、さらに筑波大学大学院でスポーツ医学博士の学位を取得。
日本オリンピック委員会情報戦略部長・ゴールドプラン委員、日本レスリング協会ナショナルチームコーチ兼テクニカルディレクター、国際レスリング連盟サイエンスコミッションメンバー、スポーツ庁参与などを歴任(一部、現職)。
2015年から経済産業省・文部科学省のクロスアポイントメント制度におけるスポーツ界第1号として専修大学から日本スポーツ振興センターに出向(ちなみにスポーツ界第2号は東京医科歯科大学から2020東京オリンピック・パラリンピック組織委員会へ出向している室伏広治)。
2018年10月、国立スポーツ科学センター長に就任し、現在に至る。

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