トレイルランナー鏑木毅、50歳の挑戦に松田丈志はなぜ共鳴したのか
トレイルランナー鏑木毅、50歳の挑戦 2
あの高揚感をもう一度
UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)が想像を絶する過酷なレースであること、鏑木毅(かぶらき・つよし)さんが挫折を繰り返しながらもトレイルランに出会い、成功体験を得たこと......それらを踏まえたうえで、改めて今回の『NEVERプロジェクト』 、2019年に50歳となる鏑木毅がUTMBに挑戦する意味を考えていきたい。
2009年、UTMBで3位となった鏑木毅
まず、私は鏑木選手がこの挑戦に求めているものがあると感じた。
それは"高揚感"だ。鏑木さんは40歳で公務員を辞めて、プロのトレイルランナーになった。自ら安定した職業を捨て、退路を断ち、プロとして生きていく覚悟を決めて走り始めた年に、UTMBで日本人最高の3位になった。
鏑木選手はこの時に感じた、自分の全身の細胞がすべて反応しているような高揚感をもう一度味わいたいという。
この感覚は私にもわかる。私が五輪に4度出場したなかで、メダルを獲った3大会では、年が替わってオリンピックイヤーに突入したあたりから、自分の全身の細胞が燃え上がり、本番まで一心不乱に突き進んでいけるようなエネルギーを感じていた。全身がオリンピックイヤーを"待ってました"と言わんばかりにエネルギーに満ち溢れてくる。トレーニングに対するアイディアなど、閃(ひらめ)きも研ぎ澄まされる気がしていた。
その高揚感とも充実感ともとれる感覚は、引退した今、なかなか味わえるものではなかったんだなと思う。
では、その高揚感はどこからくるのか?
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