筋肉が腫れ上がってからが勝負。クライミング野口啓代がW杯最終戦へ (3ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 リード種目は制限時間6分以内で、トライできるのは1度しかない。予選で2本のルートを登り、成績上位26選手が準決勝に進み、さらに8選手が決勝の舞台に立つ。1本のルートで競う準決勝、決勝で重要になるのがオブザベーション(下見)。選手たちは競技開始前に一斉にルートを確認する。登りながら使うホールドの順に手を動かし、ほかの選手たちと会話しながら攻略法を考えていく。

「オブザベは登り方に迷っているパートや、見落としているホールドを教え合いますね。それを基にして、ルートの最上部や核心部は数パターンの登り方を決めて競技に臨みます。だけど、登りだしてみたら想定通りにはいかないことも多いんです。その時は、ホールドを手で押さえた時のフィーリングでどう動くか決めています。決めるというよりは、体が咄嗟に動く感じですね。だから、登り終わってみたらオブザベで想定していたのと全然違うこともあります」

 ボルダリングはスタートで手足の使うホールドが決められ、ゴールは"TOP"マークがついた最終ホールドを保持し、体をコントロール下におけば完登になる。しかし、リードの場合のスタートは、どのホールドから登り始めてもいい。ゴールも最終ホールド以外から最終クイックドロー(ロープを通すための用具)にクリップしても完登となる。

 順位は完登がベストだが、途中で落下した場合は手で使うハンドホールドの獲得高度で決まる。選手はルートを登りながら確保支点にロープをクリップしていくが、この動作にもたつくと持久力は奪われていく。

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