カド番⇒綱取りへ急浮上。豪栄道が全勝優勝を決めた「自分の型」

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Kyodo News

 大相撲秋場所で大関・豪栄道(30歳・境川部屋)が全勝で初優勝を飾った。カド番大関の全勝優勝は史上初。大阪出身力士の優勝は1930年夏場所の山錦以来86年ぶり。日本人力士の全勝優勝は96年の貴乃花以来20年ぶりという、記録づくめの初賜杯となった。

全勝で初優勝を果たし、賜杯を手に喜ぶ豪栄道全勝で初優勝を果たし、賜杯を手に喜ぶ豪栄道

 13連勝で迎えた14日目。勝てば優勝が決まる玉鷲との一番を、得意の右差しから左まわしを引く力強い寄り切りで優勝を決めた。取組後のインタビューでは、人前で泣いたことがない男が、「うれし涙です」と、こらえることなく号泣した。

 年6場所制が導入された1958年以降では、史上5位の年長記録となる30歳5か月での優勝。「いろいろ我慢をしたことが思い浮かびました」と絞り出したその言葉通り、苦難の道をたどった初優勝だった。


 大関昇進を決めたのは2014年の名古屋場所でのこと。大関昇進の内規は「三役3場所で合計33勝以上」であり、春場所で12勝を挙げたものの、続く夏場所では8勝止まりだった豪栄道の昇進は話題にさえなっていなかった。しかし、11日目に白鵬を破るなど2横綱2大関を倒した殊勲と、関脇として昭和以降1位となる連続在位14場所の安定感が高く評価され、その場所は12勝と内規にあと1勝足りなかったが、大関へ推挙された。

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