元祖・天才少女ジャンパー伊藤有希が再び開花するまで (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AP/AFLO

 2年前の世界選手権の個人戦は20位だったが、正式種目に初採用された混合団体では、金メダルを獲得。その時は「私は脚を引っ張ってばかり。次に飛んだ大貴兄ちゃんの大ジャンプに助けてもらった」と涙をボロボロと流していた。

 だが今回は22日に行なわれる混合団体で、脚を引っ張るのではなく、自信を持って連覇へ臨むことができると微笑む。

 女子の決勝後にノーマルヒル予選を飛んだ葛西は、「嬉し過ぎて自分のジャンプに気持ちが入りませんでしたよ」と笑いながらこう続ける。

「有希が頑張ってきたことを全部見ているし、僕と同じような辛い思いもしていましたから。去年の五輪でも悔しい思いをしていたし、夏も負けてばかりで万年2位(髙梨に次ぐ)と自分でも思っていただろうし、本当に悔しかったと思う。でも今シーズンのW杯の前半戦では風も当たらなくて表彰台には立てなかったけど、僕は力がついたと思って見ていたので。その経験で精神的にも強くなって、必ずメダルを獲ると思っていました」

 今回の試合を振り返れば、これまでとは違う僅差の戦いだった。1位のフォクトと伊藤の得点差が1.8点だっただけでなく、5位までが10点差以内。踏み切りを見てもほとんどの選手が上半身を無駄に動かさない技術を身につけるまでになっている。世界の女子ジャンプのレベルが、五輪種目になったことで一気に上がっているのは確かだ。髙梨ダントツという状況は変化しつつある。

 そんな中で日本女子ジャンプにとって、髙梨だけではなく伊藤も一気に頭角を顕したのは貴重なことだ。髙梨も孤独な戦いを強いられることもなくなり、なおかつふたりの競り合いが、さらなる日本女子ジャンプのレベルアップにもつながる。

 伊藤の銀メダル獲得は、次の平昌五輪へ向け、大きな力になるはずだ。

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