【大相撲】名力士たちが語る、8勝7敗 逸ノ城のこれから (3ページ目)

  • 福留崇広●文 text by Fukutome Takahiro
  • photo by Kyodo News

 歴史に名を残す横綱は、すべて万全の型を持っている。逸ノ城の右を差す、あるいは左上手を引けば揺るがない取り口は、将来への大いなる可能性を感じさせたことは確かだ。

 フィーバーの1年は終わった。「本当に早かった。早い1年でした」と逸ノ城。来年は、勝負の年になる。大関昇進、さらに綱をつかむには「もっと相撲を覚えること」と理事長は言った。「立ち合いの厳しさ、鋭さ、速さ。当たってからの差し方、回しの取り方、すべてを覚えていかないといけない」

 快進撃で初土俵から所要5場所で関脇まで駆け上がったが、言ってみれば入門してからまだ1年しか経っていない。

「まだまだ覚えることはたくさんある。すべてはこれから。負けたことを反省して、後は自分がそれをどう受け止めるか。勝ちたいと思えば、やることはただひとつ。稽古しかない。やることやらないで強くなった力士はいない」。優勝31回の元横綱・千代の富士の九重親方は、今後の飛躍はすべて本人の自覚だと言った。

 元横綱・大乃国の芝田山親方は、稽古の方法を工夫することを説いた。現役時代、200キロを超える体格だった親方。

「体が大きかったからスタミナが自分自身、課題だった。だから稽古では毎日、30分で30番を連続で取り組んでいた。待ったなしの申し合いを課すことで自分の中の弱点を克服しようと努めた」。

 横綱にまで昇進した力士は、例外なく猛稽古の伝説がある。「これからは親方と相談して、出稽古に行きたい。上位の人がいる部屋へ行きたい」と逸ノ城。語り継がれるような泥まみれの猛稽古を怪物が自分に課した時、大関、そして横綱への道が開いてくる。

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