【大相撲】怪物・逸ノ城が今、直面している三役の壁

  • 福留崇広●文 text by Fukutome Takahiro
  • photo by Kyodo News

 逸ノ城は本物か。

 大相撲九州(11月)場所のテーマは、この一点に集約されていると言っていい。新入幕の秋(9月)場所で13勝2敗。横綱・鶴竜、2大関の稀勢の里、豪栄道を撃破し,優勝した白鵬に次ぐ成績を残した。三賞の殊勲賞、敢闘賞をダブル受賞。まぶしいほどの活躍は、まさに怪物だった。

九州場所5日目  はたき込みで豪風を下した逸ノ城九州場所5日目  はたき込みで豪風を下した逸ノ城

 迎えた九州場所。番付は東前頭10枚目から一気に関脇まで駆け上がった。髪もザンバラからちょんまげに変わった。初土俵から所要5場所の三役昇進は昭和以降、最速のスピード出世だ。横綱、大関の上位陣と総当たりする初めての場所は、その実力の真価が問われる試練の土俵でもある。

 興味が注がれる中、折り返しの中日を終えて4勝4敗の五分。それをどう見るか? 北の湖理事長は「新三役でこの成績はまずまずです」と評価した。

 優勝24回の大横綱が及第点を出した理由は、8日目に前頭・栃煌山に取りこぼしたものの、番付下位から確実に白星を稼いでいたことだ。他に敗れた相手は、初日の横綱・日馬富士、4日目の大関・豪栄道、6日目の横綱・鶴竜とすべて上位陣だった。「がっぷり組んで胸を合わせれば、そう下位には負けないだろう」と理事長は分析する。右四つ左上手がモンゴルの怪物の得意な型だ。この絶対的な攻め手にもちこめば、三役以下に負けない実力を持っていることを、ほぼ証明した。


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