【ソチ・パラリンピック】メダルラッシュ。
ベテラン森井大輝が与えた日本チームへの影響

  • 堀切 功●文・写真 text&photo by Horikiri Isao

 ソチ・パラリンピックのアルペンスキー競技は3月8日、滑降で幕を開けた。時速100kmを超えるスピードで競うこの種目で、座位(シッティング)クラスの森井大輝(富士通セミコンダクター)はスタート直後に激しく転倒。全身を叩きつけられながら、急斜面を滑り落ちていった。全身を襲う強い痛み。しかしコーチのもとに向かうと、森井はすぐさま無線機を手に取り、後から滑る選手たちのために、身を持って得たコース状況の情報を伝えた。

スーパー大回転の表彰式で銀メダルを手にし、安堵の表情を見せる森井大輝(左)と、そんな先輩を笑顔で称える狩野亮(右)スーパー大回転の表彰式で銀メダルを手にし、安堵の表情を見せる森井大輝(左)と、そんな先輩を笑顔で称える狩野亮(右) この滑降で、狩野亮(マルハン)が金メダルの栄誉をつかみ、鈴木猛史(駿河台大職員)も銅メダルを獲得。森井は、身体の痛みと悔しい気持ちを押さえながら、後輩たちの活躍を祝福した。これこそがまさしく、彼が望み、作り上げようとしてきたチームの形だった。

 たとえ自分が転倒しても、他の選手がいる。森井が描き続けてきたのは、そんなチームだ。チームメイトの力を信じることができるから、自分は全力を出せる。そして、身近なライバルの存在が、自分をもっと強くする。今の日本チームにはこの森井の持論、言うなれば"大輝イズム"が深く浸透している。その成果が表れたのだから、2人のメダリストを心から祝福するのは彼にとって自然なことだった――。

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